絶滅危惧種のチョウ、まるで別れを惜しむよう 卵から成長を見守った子どもたちの手で空へ
長野県伊那市西春近北小学校の3年生26人が9日、教室で卵の頃から成虫に羽化するまで見守った絶滅危惧種のチョウ「ミヤマシジミ」を、学校近くの小出城跡に放った。ケージを出た体長2センチ余りのミヤマシジミは、別れを惜しむように児童たちの指や帽子に止まった後、野に飛び立っていった。 【写真】別れを惜しむかのように指に止まったミヤマシジミ
市民でつくる「伊那ミヤマシジミを守る会」の会長、岡村裕(ひろし)さん(83)=西春近=が協力。岡村さんが6月に小出城跡で採卵し、幼虫の食草、コマツナギの鉢植えと一緒に3年生の教室に届けた。児童たちは授業の一環で幼虫、さなぎ、そしてチョウになるまでを観察した。小出城跡は2年前、岡村さんらがミヤマシジミの生息地を増やそうとコマツナギ120本を植えた場所だ。
ケージから飛び立ったミヤマシジミは22匹。児童たちは「バイバイ」「元気でね」などと声をかけた。羽化する瞬間を見たという大川萌愛(もあ)さん(8)は「雄と雌で色が違うのが面白い。かわいい」と話した。
岡村さんは市内の別の小学校でも、ミヤマシジミの成長を観察してもらう活動をしているが、西春近北小では初めて。22匹が羽化したことに「思っていたより多かった」と喜んだ。子どもの頃からチョウが好きという岡村さんは「最近はチョウの数も種類も減った。食草や花の減少が影響しているのだと思う」と懸念し、「子どもたちに生物多様性の大切さを知ってほしい」と願っていた。