【漫画】伝説の浮世絵師・葛飾北斎とその娘が入れ替わったら? ifの歴史を描いた『女北斎大罪記』Xでバズ
伝説の浮世絵師・葛飾北斎の娘、葛飾応為。父の制作補佐を務めたという彼女もまた残された作品の少なさゆえに伝説となっている。その両者がもし入れ替わっていたとしたら――。 【漫画】伝説の浮世絵師・葛飾北斎とその娘が入れ替わったら? ifの歴史を描いた『女北斎大罪記』 そんなifの世界を描いた漫画が『女北斎大罪記』だ。その第1話が『葛飾北斎に成り代わった娘の話』としてXで1.9万のバズを起こしている。作者は漫画以外に日本画や能面制作なども行う作家・末太シノさん(@shinomatsuda)。なぜ彼女は葛飾応為を描いたのだろう。(小池直也) ――反響などはいかがですか? 末太シノ(以下、末太):「やっぱり葛飾応為って人気なんだ!」と思いました。人気ゲーム『Fate/Grand Order』に「北斎に成り変わる応為」という、本作と同設定のキャラクターが出てくるそうなので、そのおかげもあると思いますね。ラッキーです。 ――栄(葛飾応為)を主人公にして、かつ北斎に成り代わるユニークな本作の着想や制作のきっかけについて教えてください。 末太:もともと応為は好きな歴史上の人物でした。あと私は美術大学で日本画専攻だったので、そうでない人より、絵に関することが描きやすいかなと思って。 北斎に成り代わる案は最初に応為の企画を出してボツになった時に、編集さんたちの感想のなかにあったアイデアなんです。編集さんと「これいいね!」となって拝借しました。感謝です。 ――「観る/見る」など印象的なセリフもあります。特に北斎や栄に伝わる言葉ではないと思いますが、こういった表現はどこから? 末太:「観察する=観る/ただ見るだけ=見る」と縮めました。「観察する」のと「ただ見るだけ」は違う、ということは絵を描く人はみんな実感として知ってることだと思うので、江戸期日本で言わせてもいいかなと。 ――実在しながらも謎多き人物を主人公に据えて制作していくのは難しさもあると思います。 末太:「栄がカッコいい!」となるようなエピソードに使えそうな要素はないかな、と年表とにらめっこしてます。歴史の勉強は好きなので調べるのは楽しいです。でも全部は調べきれないし、お話的に都合が悪い部分は無視したりもするので、歴史に不誠実なことをしてるな……という罪悪感はあります。 ――絵柄も魅力的でした。構図や表情、キャラデザインでこだわりや意識していることがあれば聞きたいです。 末太:ありがとうございます。流行ってるアニメやゲームの絵柄をまねる努力をしました。もとの癖が強いので、薄まっていい感じになったと思いたいです。表情のある顔面をたくさん描きたくて漫画を描いてるようなものなので、表情にはこだわってます。 キャラデザは、瞳の描き方をキャラ毎変えるようにしてます。日本髪の制約があって髪型で差をつけにくいので。 ――末太さんは、漫画以外の絵や仮面などのアート制作もされています。こういった作品と商業漫画を作る時で考え方をスイッチしている部分はありますか? 末太:特に変わらないです。表現したい物を決めて、それに必要な材料を集めて組み立てる。ただ連載漫画は編集さん達が関わってくれてるので合作っぽいかもしれません。でもやっぱり作る工程は同じなので、考え方は変わりないと思います。 ――今後『女北斎大罪記』をどう描いていきますか? 末太:「主人公の栄がカッコいい!」という点だけは守って行きたいです。あとは写真的リアリティとは別次元にある日本画の優位性とか、優位性関係なく絵という表現が人間発達に有用だとか、漫画で説明できたらいいなと思っています。 もともと美術教員になりたくて色々勉強したものの、激務におびえて諦めてしまったので、それらの知識を上手く使えたら、勉強を助けてくれた人々に報いることが多少できるかな……と。 ――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか? 末太:めちゃめちゃ多いですが、漫画で一番憧れたのは『HELLSING』の平野耕太先生ですね。絵も話も台詞も演出もカッコイイ。今作の企画は、歴史物の少女漫画をたくさん読んできた影響があると思います。 大和和紀先生、池田理代子先生、篠原千絵先生、山岸凉子先生、諏訪緑先生、神坂智子先生、さいとうちほ先生……と挙げきれません。「科学技術が未発達で性差が厳しい時代でも、活き活きできる女カッコいい!」と皆さんの作品に憧れました。 ――作家としての展望、なりたい作家像を教えてください。 末太:長生き&生涯現役。やっぱり葛飾北斎、理想です。年を重ねたからこそできる表現で、人を楽しませられるようになりたいです。
小池直也