岩国病院が分娩停止へ、6月末で産科病棟閉鎖 医療スタッフ確保が難しく 出産可能な病院は岩国市内で2カ所に
山口県岩国市の岩国病院が6月末で産科病棟を閉じ、分娩(ぶんべん)の受け入れをやめることが8日、分かった。医療スタッフの確保が難しくなったのが主な理由。市は市内の出産環境を維持するため、同病院を含む民間の2医療機関に2024年度から補助金を出す方針を示したばかりだった。7月以降、市内で出産できるのは、もう一つの民間の医療機関と国立病院機構岩国医療センターの2カ所に減る。 【写真】岩国市の母子手帳アプリ 岩国病院によると、産婦人科の常勤医は庄司孝院長(88)だけ。週3日は市外の非常勤医師が診療している。ほぼ24時間体制で出産に備える庄司院長が高齢になり、さらに助産師を確保できなくなったため、1月ごろから分娩の受け入れ中止を検討。2月に取りやめを決めたという。市には文書を郵送し、今月7日に伝えた。 出産予定日が6月までの妊婦は受け入れる。産婦人科の外来診療は7月以降も続ける。7月以降の出産予定者には他の医療機関を紹介している。庄司院長は「50年間頑張ってきたが、これ以上は難しいと判断した。市は、もっと危機感を持って岩国の産科医療を守ってほしい」と話す。 少子化を背景にした分娩数の減少や医師の高齢化などで市内の産科を取り巻く環境は厳しさを増している。市は22年3月から、産科がある市内の3医療機関に現状を聞き取り、対応策を検討。3機関のうち岩国病院など民間2機関に24年度から財政支援する方向で調整し、1200万円ずつ補助金を出す考えを今年2月に2機関側に伝えた。 市は2機関への補助金2400万円を盛り込んだ24年度一般会計当初予算案を開会中の市議会定例会に出している。片塰(かたあま)智恵健康医療部長は「残念だが岩国病院側の事情もあり致し方ない。市民への影響が最小限になるよう、他の医療機関と連携して対策に取り組む」と話している。
中国新聞社