おせち商戦二極化 「年に一度のぜいたく」か物価高伴う節約志向か 静岡県内百貨店、多様な提案
最大9連休となる年末年始に向け、新年用おせち料理の受注が静岡県内百貨店で本格的に始まった。物価高に伴う節約志向の強まりに寄り添った商品と、「1年に一度のぜいたく」を体現する高価格帯の両面を提案し、消費の二極化に対応している。“おひとり様”用サイズや大人数で楽しめるオードブルを強化するなど、各店は多様化するニーズを捉えようと販売戦略を凝らす。 予約販売を10月に開始した松坂屋静岡店(静岡市葵区)は、料理に手間暇をかけずに簡便化する昨今の風潮を踏まえ、今年のテーマを「慶(よろこ)びのシェア」に設定した。原材料費高騰の影響でおせち全般は値上がり傾向だが、和洋中の料理を少量ずつ分け合える2万円台の商品が人気を集めている。 販売初日は有名料理家らが監修した各種おせちの詰め合わせを先着購入者にプレゼントする販売促進が奏功し、前年同日比2倍の売り上げを記録した。夫婦2人分のおせちを買い求めた同区の主婦中西由喜江さん(84)は「年を取って作ることが大変になったので初めて購入した。華やかな気分を気軽に楽しみたい」と期待した。山木和正バイヤーは「名店の味を堪能して商品選択の幅を広げながら、年末まで消費機運を高めていきたい」と話す。 静岡伊勢丹(同区)は、昨年に続きクレジットカードとアプリ会員向けにおせちを先行販売している。平均販売単価は約2万6千円で、新潟など他の地方都市と比べ数千円高いという。小旗大祐バイヤーは、「大切な新年を迎える予算は惜しまないという県民気質が反映されているのでは」と分析。外商顧客に根強い需要がある高価格の三段重から1万円台のミニサイズまで幅広い価格帯を準備し、昨年以上の受注を目指す。 家族や友人など大人数の集まりでの需要を見据えるのは遠鉄百貨店(浜松市中央区)。今年からオードブル単独のチラシを作成し、正月三が日を含めた年末年始期間全体で需要を獲得しようと注力する。新型コロナ禍を経て年々高まるネット購入比率を背景に、ローストビーフやスイーツなど若い客層や親子3世代も楽しめる多彩なラインアップを取りそろえ、幅広い世代へ訴求を図る。
静岡新聞社