進む教科書のデジタル化と活用方法の課題
デジタル教科書でも昔のやり方にこだわる教員
東京家政大学の太田氏は、全国の学校でデジタル教科書の導入状況を視察してきた状況を基に講演した。学校現場では、デジタル教科書を授業に積極的に使う教員と使わない教員との差が広がっているように感じるという。 「英語の授業では、全員でデジタル教科書の内容を音読させるといった一斉授業のやり方にこだわる教員は依然として多い。生徒自身のペースで学習者用デジタル教科書を使わせて学びを生徒に任せることに不安に感じる教員が多いのではないか」と太田氏は話す。児童・生徒の学び方を変革していくと同時に、教員のデジタル教科書を使った授業の進め方も変革していく必要があると指摘した。 神戸大学の岡部氏はデジタル教科書の実証事業で算数の授業作りを担当してきた。実証事業での事例を紹介し、「学習者用デジタル教科書を上手に使えば、これまでの授業のやり方を改善できる可能性がある。コンテンツを見るだけでなく、書き込んだり付箋を貼ったり、学んだことをグループ活動などで試したりすることにもデジタル教科書は活用される。必要な子は何度も繰り返し学習し、能力のある子供は次の学びを進めていくといった個別最適な学びの基礎にもデジタル教科書がある」と岡部氏は話した。 黄地氏は「子供や教員が悩んで試行錯誤して乗り越えるというプロセスも、学びのあるべき姿だ。デジタルが良いか紙の方が良いかという二項対立に陥るのではなく、校務のDXも進めてデジタル化の有用性が高まることで授業の内容も改善されていくという流れを作っていくべきだ。実践例を増やして横展開していきたい」と話した。
文:小槌 健太郎