グローブの王、デンツ フィット感高くチャールズ英国王が戴冠式でも着用
連載《ロイヤルワラント図鑑》Vol.11
防寒対策に、コーディネートの完成度を高めるスパイスに……春先まで手放せないグローブ(手袋)。いつものおしゃれを何倍にも格上げしてくれる、そんな極上のグローブを求めるなら、「グローブの王様」と称されるデンツをチェックしたい。1777年創業のデンツは、驚くほどのフィット感と肌触りの良さで知られる世界最高峰の老舗グローブブランド。英国王の戴冠式用グローブも製作するなど、ロイヤルファミリーに愛される存在だ。熟練職人の手と目を頼りに生み出される名品を通して、ブランドの奥深きストーリーを紐解(ひもと)く。 【写真で見る】チャールズ国王、エリザベス女王の戴冠式からグローブの製作工程、おすすめの人気モデルまで10枚以上の写真はココからチェック!
■英国王・女王の戴冠式用に、歴代5人のグローブ製作
手にしているのを忘れてしまうほど、しっくりとなじむフィット感で「シークレットフィット」と形容されるデンツのレザーグローブ。創業から250年近く、本物志向のおしゃれ玄人(くろうと)たちを虜(とりこ)にしてきた。このブランドが、英国の国王・女王(以下、便宜的に「国王」と表記)といった歴代5人の君主の戴冠式用グローブを製作したことはご存じだろうか。 英国王の戴冠式において、グローブは重要な役割を持っている。国王は王室の指輪をはめた後、「コロネーション・グローブ」と称される戴冠式用グローブを右手だけに着用する。「コロネーション(coronation)」は英語で「戴冠式」の意味。儀式の間、そのグローブをまとった右手で握るのは、英国クラウンジュエルの中で最も神聖なアイテムの1つ、権力と正義の象徴の「十字架の王笏(おうしゃく)」だ。 2023年5月6日に行われた英国王チャールズ3世の戴冠式。王が右手に纏(まと)ったのは、デンツが祖父のジョージ6世の戴冠式用に製作したグローブだった。 白いレザー製で、ガントレット(手首を覆う部分)には金属糸やワイヤ、スパンコールでチューダー朝のバラやスコットランド国花のアザミ、アイルランド国花のシロツメグサが刺しゅうされている。 さらに遡ると、1902年のエドワード7世の戴冠式のほか、1911年のジョージ5世、1937年のジョージ6世、1953年のエリザベス2世の戴冠式でも、デンツは特注グローブを製作。そんなデンツは2016年に当時皇太子だったチャールズ国王からロイヤルワラントを授与され、現在も保持している。 2022年6月、故エリザベス女王の即位70周年の祝賀行事「プラチナ・ジュビリー」が行われた。これを祝し、デンツでは英国旗「ユニオンジャック」をイメージした限定カラーのドライビンググローブが誕生。ロイヤルファミリーとの絆を物語る。