なぜ変更? 11回目を迎える東京マラソンが新コースになった理由
コース変更でランナーの負担軽減も
東京マラソンが創設されてから10年が経過。その間に運営側はノウハウを積む一方で、東京マラソンは道路管理者や警察、沿道の商店や住民からも認知されるようになりました。認知度が高まったことで、マラソン大会時における交通規制についても一定の理解が得られるようになりました。 「ロンドンマラソンのフィニッシュは、バッキンガム宮殿が見える場所にあります。ニューヨークシティマラソンのフィニッシュはセントラルパークです。アボット・ワールドマラソンメジャーズのフィニッシュは都市の中心部にあり、その都市を代表するようなロケーションが選ばれています。東京マラソンもアボット・ワールドマラソンメジャーズに加入し、世界でも指折りのマラソン大会になりました。だからフィニッシュは、東京の顔に相応しい場所に変更したのです」(早野さん)。 今回のコース変更で、フィニッシュの場所にはいくつか候補地が挙がりました。しかし、大幅にコースを変更してしまうとランナーが混乱します。また、難題である交通規制の体制づくりもゼロからやり直しになってしまいます。加えて目の前を走ることで騒音問題や観戦者によるゴミ問題も生じます。そうした諸問題に対して、近隣の商店や住民に理解を得るといった沿道調整が必要です。主催者である東京マラソン財団は、今までのコースをできるだけ踏襲しながら、さまざまな問題についてもシミュレーションをしました。その結果、東京駅前・行幸通りがフィニッシュに選ばれたのです。 しかし、コースが変更されてしまうと、それまでの歴代タイムと比較することができなくなります。また、ランナーたちにとって勝敗のカギとなる駆け引きのポイントにも変化が生じます。それでも、コースを変更するのは、なぜなのでしょうか? 「コースが変更されたことによって、確かに前回大会のタイムは参考記録という扱いになります。しかし、これまでのコースは臨海部を走るので海風の影響を受けるなど、ランナーにも負担が大きかったのです。実際に走るランナーにしてみれば、今回のコース変更は負担軽減になっていると思います」(早野さん)。 東京マラソンでは、海外から参加するランナーも年を追うごとに増加しており、昨年は約6400人の外国人が走ります。東京マラソンの注目度は、国内のみならず世界でも上昇しているのです。 そうしたことから、参加するランナーばかりに目が行きがちですが、早野さんは「東京マラソンは、すでに参加者だけの祭典ではなくなっています。東京マラソンは、“走る喜び”、“支える誇り”、“応援する楽しみ”といった3つのコンセプトを掲げています。ランナーだけではなく、沿道の住民や応援する人、ボランティアとして運営を手助けする人など、大会に関わるすべての人たちに『私たちが大会を支えている』という誇りをもってもらえるような大会になっていると考えています」と言います。。 新コースで実施される“新”東京マラソンで、どんなドラマが繰り広げられるのでしょうか? 小川裕夫=フリーランスライター