【箱根駅伝の一番星】湯浅仁主将が、中大を28年ぶりの頂点へと導く
陸マガの箱根駅伝2024カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」が今年もスタート。出場23校の注目選手を紹介する。中大の湯浅仁(4年)は、大学で急成長した遅咲きの大器。今季、主将の大役を任されてからは目を見張るような成長曲線を描き、箱根駅伝優勝への欠かせないキーマンとなっている。
自分に必要なものを考える力
中大に入学したとき、5000mのタイムは同級生のなかでも下から数えた方が早かった。それが2年生の終わり、箱根駅伝の9区を任され、区間3位と好走した。 湯浅仁は、化けたのだ。 なぜ、湯浅は成功できたのか? 学生に「考える力」を求める藤原正和監督のスタイルが、湯浅には合っていたのだ。藤原監督はいう。 「湯浅はトレーニングにしても、自分に必要なものをカスタマイズする能力に優れていました。考え、地道に努力を重ねれば、大会に出られることを後輩たちに示してくれています」 4年間、練習、トレーニングを積み重ねてきた湯浅はこう話す。 「高校時代は与えられた練習メニューをこなすのに精いっぱいでしたが、大学に入ってからは監督、トレーナーが意図していることを読み取り、自分に必要なことはなにか、考えるようになったのが良かったと思います。それと藤原監督から『真面目に走るのも良い。でも、余裕を持って走ることも大切だよ』とアドバイスをいただき、それから競技が楽しくなったんです。これは自分にとってすごく大きなことでした」 前回の箱根駅伝でも同じ9区を担当し区間6位で、総合2位に貢献。翌2月下旬には大阪マラソンに出場した。 「走ったあとは疲労が抜けず、たいへんでした。卒業後、マラソンに挑んでいくのにいい勉強になったと思います」
欠かせない、キャプテンの好走
4年生となり、キャプテンになってからの活躍は目覚ましい。 前期は関東インカレのハーフマラソンに出場、日本人ではトップとなる2位。フィニッシュ地点では、冷静な湯浅にしては珍しく、吠えた。 夏合宿はトヨタ自動車のお世話にもなり、さらにロードでの強さを増した。 出雲駅伝では最長区間、6区のアンカーを任され、区間2位。全日本でもエース区間の7区を担当し、区間賞を獲得した国学院大の平林清澄(3年)と大接戦となり、こちらも区間2位と好走した。この記録は駒大の鈴木芽吹(4年)を上回るタイムで、湯浅にとっておおいに自信になったのは間違いない。 そしていよいよ学生最後の駅伝、箱根駅伝を迎える。 「駒澤さんをストップできるのは中大だけだと思うので、いい準備をして箱根駅伝の日を迎えたいと思います」 5区、6区以外ならどこでも走れるという湯浅。28年ぶりの優勝には、キャプテンの好走が欠かせない。
PROFILE ゆあさ・じん◎2001年8月27日、宮崎県生まれ。170cm・56kg、A型。木花中→宮崎日大高(共に宮崎)。箱根駅伝は2年時9区3位、3年時9区6位。自己ベストは5000m13分55秒60、10000m28分12秒17、ハーフ1時間02分35秒(いずれも大4)。 文/生島 淳 写真/中野英聡、馬場高志
陸上競技マガジン編集部