アート界注目の新鋭ジャデ・ファドジュティミにインタビュー
──タカ・イシイギャラリーでの展示「Connecting in Silence」について教えてください。築150年の古民家スペースでの開催はいかがでしたか? どの国もそれぞれ独特の色のトーンを持っています。自分の作品は日本から多くの影響を受けているから理論的には絶対合うはず、と思ったものの、実際に伝統的な日本家屋に作品を設置するのは難しいんじゃないか?と、初めは自信がなかったんです。でもコントロールしすぎることなく、作品のあるがままに置いてみたら、「ああ、やっぱり自分の作品は日本に影響を受けていたんだなあ」と腑に落ちました。設置しながら、日本のバランス感覚=“わびさび”のようなものも感じました。 タイトルの意味合いとしては、静寂(Silence)の中でアートを通じた対話を感じてもらえたら、ということでした。実際に言葉を発さなくても、一緒に共鳴することは可能ですから。私の抽象的な表現の展示を見て、その空間に佇みながらコネクトしていく。そして、あなたひとりだけでなく、展覧会を観に来ているほかの人たちともコネクトできるかもしれない。ランゲージというのは、言葉だけではないと思うんです。感覚とか音、味覚、そして視覚。 ロンドンにある私のスタジオに来てくれたらわかるんですが、そこにはオモチャや写真、子供の頃から描きためたドローイング、洋服などがぎっしりとひしめいています。私の作品はコンマリのように(笑)整然とした白壁だけの空間じゃなく、そんなごちゃごちゃとしたいろんな要素に囲まれながら展示されているのが似合う。子供のころから母によく「片づけなさい!」と言われたものだけれど、自分にとってはお洋服の山にもちゃんと意味があったし、今、3000スクエアフィート(約280㎡)の大きなスタジオでさえ、どこに何があるかを把握していて、誰かが何かを動かしたらすぐにわかるくらい(笑)。 今、興味があるのは、アートのある空間がどう人と交わることができるのか?最近はサウンドにも関心があり、ペインティング以外の表現メディアも絡めた展示の可能性を広げていけたらいいな、と考えています。 ●Jadé Fadojutimi ジャデ・ファドジュティミ/1993年英国ロンドン生まれ。スレード美術学校で絵画を学び、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号を取得。主な展覧会に、WHAT MUSEUM(2022年、2023年)、ヘップワース・ウェイクフィールド(2022年)、ICAマイアミ(2021年)、コロンバス美術館(2021年)など。2022年には第59回ヴェネチア・ビエンナーレ、2021年にはリバプール・ビエンナーレ(英国)に参加。作品は、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ボルチモア美術館、ヘップワース・ウェイクフィールド、ICAマイアミ、テート(ロンドン)、ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)などのパブリック・コレクションに収蔵されている。 Photo_Hikari Koki(Portrait) Interview&Text _Akiko Ichikawa
GINZA