藤原竜也に地上波連ドラで会える喜び “全領域”を演じられる唯一無二の凄さ
映画やドラマをはじめ、とにもかくにもコンテンツ過多だといわれる昨今。溢れ返る作品群の中から、本当に自分が観たいもの、あるいは観るべきものと出会うことに難しさを感じている人もいるのではないだろうか。 【写真】藤原竜也の紛れもない代表作となった『カイジ』シリーズ いきなり個人的な話になるが、私が感じていたのは圧倒的な藤原竜也の不足感。しかしそこへ、朗報が入ってきた。彼が主演を務めるドラマ『全領域異常解決室』(フジテレビ系)がはじまるというのである。 本作は、最先端の科学捜査をもってしても解明できない“不可解な異常事件”を、「全領域異常解決室」という捜査機関が解決していくもの。異常事件に挑む捜査機関としては世界最古といわれる「全領域異常解決室」(通称「全決(ゼンケツ)」)は、人が姿を消してしまう「神隠し」や、黒い人影のようなものが現れる怪奇現象「シャドーマン」、キツネの霊に取り憑かれることによって精神に異常をきたしてしまう「キツネツキ」など、超常現象やオカルトの類も究明している存在らしい。 藤原が演じるのは、この「全決」の室長代理である興玉雅という人物だ。異常なまでの知識量を有し、記憶力と洞察力を兼ね備えている彼は、その力を活かして、あらゆる領域で起こる異常事件を解決へと導くスペシャリストなのだという。興玉は異常事件が発生した現場の細部まで調べ、誰もが納得する仮説を提示する。そのいっぽうで、彼が口にする言葉はどこか謎めいていて、腹の底が見えない人物でもあるらしい。これはもう、その設定からして最高ではないか。 藤原といえば、演劇、映画、ドラマと、それこそエンターテインメントの“全領域”を網羅している俳優のひとりだ。これまでに演じてきた役どころもまた、“多岐にわたる”というよりも“全領域”に及んでいる。近年のドラマ作品でいえば、『青のSP-学校内警察・嶋田隆平-』(2021年/カンテレ・フジテレビ系)では警視庁捜査一課の刑事にして、日本初のスクールポリスとなる役どころに。冷徹で、子どもたち相手にも容赦無い人物だったが、『Get Ready!』(2023年/TBS系)では高いコミュニケーション・スキルを持った国際弁護士にして闇医者チームの交渉人という役どころに扮していた。いずれも一筋縄ではいかないキャラクターだ。 私が辛うじて“藤原竜也不足”を解消できていたのは、『太陽は動かない -THE ECLIPSE-』(2020年/WOWOW)が各種配信サービスで配信中だから。こちらでの藤原は、「AN通信」という産業スパイ組織の諜報員を演じている。つねに死と隣り合わせの存在。共演者らとの感情的なドラマはもちろん、激しいアクションだってある。精神的にも肉体的にも追い詰められた状態でパフォーマンスを繰り広げるさまには、「これぞ藤原竜也!」といいたくなるものがある。 特定の作品における藤原の演技をマネする人々がいるが、これはつまりどういうことなのか。それは、マネをされる藤原の振る舞いが唯一無二のオリジナル性を持ったものであり、彼の演技のシグネチャーになっているということ。オリジナルには、俳優・藤原竜也が何かしらのフィクショナルな世界に立たなければ出会うことができない。私はつねにこの出会いを欲しているのだ。発声にしろ、表情にしろ、身のこなしにしろ、それらには彼にしか生み出すことのできない美しさがある。名だたる演劇人の元で培ってきた演技術が、そこにはたしかに見受けられる。それにマネをされるというのは、彼が主演俳優として看板を背負った『バトル・ロワイアル』シリーズや『デスノート』シリーズ、そして『カイジ』シリーズが、誰もが知る作品たちであることの証だともいえるだろう。 さて、『全領域異常解決室』は特異な設定の作品だが、藤原が演じる興玉雅は非常にみやびやかなキャラクターであるらしい。であれば、いわゆる“アツい展開”は見られないのだろうか。浮世離れしたキャラクターを、いったいどのように体現していくのだろうか。すでに“全領域”で闘ってきた藤原だが、ここでまさかの新たな一面が見られるのか。ああ、放送開始が待ちきれない。
折田侑駿