冷房が効きすぎたオフィスは「女性の生産性を下げている」
女性にとっての最適な室温とは?
ある研究によると、「女性はオフィスの温度が高いほうがパフォーマンスが向上し、特に数学や口頭での作業の生産性が向上する」という。 【画像】女性にとっての理想的なオフィスの温度とは? この研究は科学誌「プロス・ワン」に掲載されたもので、独ベルリン在住の大学生543人が参加している。研究者は、被験者らに摂氏16~32.7度のさまざまな温度に設定された部屋で、テストを受けさせた。 テストの問題には、論理と数学、そして口頭で答えるものがあったという。 すると、室内の温度が高くなるにつれて、女性は数学と口頭テストでより多くの問題を解くことができ、正答率も上がった。 具体的には、「摂氏1度の上昇により、女性の数学の正答数は2%近く向上し、言語能力は1%向上したことを発見した」という。 一方、男性は室内の温度が低いほうが成績が良かった。 だが、「男性の温度が高いときのパフォーマンスの低下は、女子の温度が低いときのパフォーマンスほど大きくはなかった」。ちなみに、論理問題の正答率については、室内の温度による顕著な違いは、男女ともみられなかった。 同研究は、女性の場合、室温を26度以上に設定すると生産性が向上する可能性を示唆している。オフィスは男性社員の快適性を優先して設定されていることが多いため、男女混合、特に女性の多い職場では、「室温を現在の基準より高く設定することで全体の生産性を向上できる可能性がある」と結論付けている。 ただ、ある人にとって理想的なものでも、別の人にとっては不快である可能性は常々ある。 米コーネル大学人間中心設計学部の名誉教授アラン・ヘッジは、性別だけでなく「体の大きさ、体脂肪、体毛、年齢によっても理想的な室温は異なる」と、UAE紙「ザ・ナショナル」に語っている。 「すべての人を満足させるのは難しく、一般に開発された基準では、80%の人が許容できると推定される条件が推奨されている」
人が持つ「熱記憶」によっても理想的な室温は違う?
2024年に学術誌「Building Services Engineering Research and Technology」に掲載されたカタールの研究では、理想的な室温は約24.9度としている。 同紙によれば、この温度は「人にとっての快適性だけでなく、冷却システムのエネルギー効率を考慮したもので、この二つのバランスをとるものである」。 つまり、「快適さを確保しつつ、作業の効率を最大化し、さらに、エネルギーコストも最適化できる」という。 室温は「24度から微調整することで、さまざまな作業を最適化できる。在宅勤務の場合は22~25度で最高の生産性を実現し、子供の部屋は20~22度が学習に最適」だと、この分野に詳しいUAEの空調エンジニアは語っている。 ただ、同紙は、温度の感じかたが人によって違う要因として「熱記憶」についても触れている。 英国で育った人と英国に数週間滞在していたインド人を対象にした、「まだ精査中である」という英国の新しい研究によれば、「英国人の被験者と比較して、はるかに温暖な気候で生活している熱記憶を持っているインド人の被験者は、高い室温設定に対してはるかに寛容だった」という。 この結果について、前述のヘッジ教授はこう述べている。 世界のさまざまな地域によって「好みの室温」が異なることを考慮すると、たとえば、北米や北欧で策定された室温基準を、より温暖な地域に適用するのは「おそらく賢明ではない」。
COURRiER Japon