偏差値72の現役慶大生・輝星「私が就活せずにYouTuberガールズバンドに入った理由」
「いま、卒論が佳境なんですよ。データの分析はすでに終わっていて、まさにこのインタビューの後、ゼミの教授と卒論の考察部分についてディスカッションします。テーマは『高齢者への音楽療法の研究』。どのジャンルの曲を聞かせるかというのは実はあまり関係なくて、一つ言えるのは“音楽を使ったトレーニングが脳の病気に有効”だということ。仮説ですが、ドラムの動きが人間の脳にメチャクチャ刺激があっていいと考えられています。“光った場所を叩く”というドラムパッドを使ったリハビリをすると脳の障害がすぐ治るんですよ。ドラムは叩くとすぐ音が出るから、フィードバックの速さに脳が喜び、脳内回路がすぐに修復されるみたいで……えっ、就職活動ですか? 一切、していません(笑)」 【画像】む、胸元と太モモがスゴいことに!…偏差値72のアイドルギタリストのセクシー水着姿 世界で200人前後しか患者がいないという脳の難病に苦しむ弟に、何かできることはないか。音楽好きな自分が力になれることはないか。必死に検索した結果、辿り着いたのが慶応大学・湘南藤沢キャンパスに音楽神経科学研究室を構える研究者でドラマーの藤井進也教授だった。 YouTube発のガールズバンド『ステミレイツ』のギタリスト・輝星(きらら・22)は、わずか1ヵ月の勉強で偏差値72の難関を突破した慶応大環境情報学部の4年生という才媛ながら、「官僚にもグローバル企業にも外資系コンサルにも、まったく興味がない」と言う。理由は「好きな音楽をやりながら、十分に稼げているから」。 大手芸能プロダクションにも、著名レーベルにも所属していないが、YouTubeをベースに安定して生活できているのだという。しかも『ステミレイツ』はまだ結成1年。いまもチャンネル登録者数は増え続けているから、月収のベースも右肩上がり。従来の“バイトしている時間のほうが長い貧しいバンドマン”のイメージから、かけ離れたところに輝星はいる。 「スタート時点では登録者数ゼロのYouTuberだったので、『面白そうだけど、めっちゃコケる可能性もあるな』と当初は就活も頭に入れていたんです。ところが、半年くらいでチャンネル登録者数が10万人を超えて、わりとすぐ軌道に乗りました。現時点でチャンネル登録者数が35万人いるんですけど、先月のお給料は中古の軽自動車がポンと買えるくらいでした。頑張りました! だから別に、売れてなくともやっていけているんですよ。前にいたバンドはメジャーデビューしていたのに月給5万円でしたから……」 気心の知れたメンバーがいるだけで、セクハラもパワハラもない。ノルマもプレッシャーもなく、安定して稼げる。こんな居心地のいい職場はない――かつて、大手レーベルに所属するガールズバンドでギターを弾いていた経験が、輝星にそう思わせているのだろう。 「ウチは東大とか早稲田、上智を出た人ばかりという教育家系で、私は宇都宮短期大学付属高校という1学年36クラス(1クラス30人)もある日本で2番目の超マンモス高に通わされました。人数が多すぎるので運動は2年に1回。クラスは成績順で、最も成績がいいクラスは1組という相当かわった学校で……。そこの1組に所属しながら、『ザ・コインロッカーズ』というガールズバンドで活動していました。1組は特別選抜クラスで偏差値は69くらいあったんですけど、芸能活動禁止だったので停学を喰らいながらバンドをやってましたね(笑)。『必ずSFCに行って実績作るんで!』って先生を説得して、なんとか許してもらっていた感じです。『ザ・コインロッカーズ』のレーベルは大手のワーナーミュージック。2万人が応募した選抜試験を突破して、夢のメジャーデビューをはたしたんですけど……」 『ザ・コインロッカーズ』は実働3年のガールズアイドルバンド。「アヴリル・ラヴィーンみたいな女性ロッカーになりたかったんですけど、気づいたらアイドルになってて……人生は難しいですね」と輝星は笑う。 「書類選考の後はワーナーの社員さんを相手にした面接がありました。演奏と自己紹介、質疑応答で3ヵ月くらいかけてオーディションが行われて、何とか突破したんですけど、結成時にメンバーが39人もいたんですよ(笑)。ギターは私を入れて15人。選抜制のバンドで『今回のギターはこの人!』と毎回違うんです。バンド初期、私は控えメンバー。ベンチ要員でした。メディアに出る“ビジュアル選抜”メンバー9人とライブ等で活躍する“テクニック選抜”6人に分かれていて、私はテクニック選抜でしたから(笑)。 ギターは独学で、『ザ・コインロッカーズ』に入る前は高校の軽音部で『女王蜂』さんのコピーとかをやっていました。コードは勉強しましたけど、通信教育もやらず、スクールにも通わず、コピーしているうちに弾けるようになりました。器用貧乏でわりとなんでもすぐにできちゃうんですよ。さすがにメジャーデビューしてからは先生についてギターを習ってテクニックを磨きましたけどね。『ザ・コインロッカーズ』では、いかにもアイドル!な曲もやりましたし、可愛い衣装も着ました。『こんな小童(こわっぱ)が文句言っちゃいけないな』ってガマンしながらギターを弾いていたんですけど、3年目の終わりに“アイドル風に売りたい派閥”と“ロック風に売りたい派閥”でメンバーとスタッフが分裂してしまって……」 ’18年12月の結成から1年後に行われたワンマンライブを経て、メンバー25名が脱退。『ザ・コインロッカーズ』は13名のガールズバンドアイドルへと変身を遂げた。輝星は最終メンバーに残っていたのだが、’21年12月で解散となった。 「『ザ・コインロッカーズ』に入ったときは高校生でしたけど、解散時は大学生になっていました。途方にくれましたね。1年間くらい、どこのバンドにも所属せず、たまにゲームのBGM用の音源を演奏する仕事をしたりしながら“ただの大学生”をやっていました。演奏バイトのギャラですか? 1本1万円とかです。で、大学3年生になったころ、『ステミレイツ』がオーディションをやっていると聞いて、応募してみたんです。『ステミレイツ』では、好きなようにやらせてもらってますし、しっかり稼げてもいる。就職とかして、わざわざこの環境を変える必要性がなかった。『どういう人生を歩むにしろ、学がないと不安だな』って考えたからSFCに入りましたけど、大企業に入って月~金の決まった時間に出社するとか、考えるだけで恐ろしくなります(笑)。 今の生活で敢えて不安を挙げるとすれば……酔っぱらって知人が経営するバーで暴れるのが私のストレス解消法なんですけど、それがらみですかね。トイレ掃除用のデッキブラシで歯を磨くのはまだしも、シャンデリアをグーパンチで粉々にしたりするのはやめようかなと(笑)。ギタリストですから、指は守らないといけないんで。これからはボクシングの16オンスのグローブでもハメてから、シャンデリアを破壊するようにします!」 輝星は教育一家の出だが両親とも芸能活動を応援してくれていて、『ステミレイツ』のYouTubeチャンネルにアップされた動画を家族で鑑賞することもあるという。 「下ネタをアップすることもあるんで、それが親子鑑賞会のときに当たるとメッチャ気まずいんですけどね!」 輝星はそう笑うと自転車にまたがり、指導教授とのセッションのために走り去った。卒論のカタがつく’24年2月、川崎クラブチッタを皮切りに『ステミレイツ』は全国ツアーに出るという。
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