初大河で繊細に美しく塩野瑛久が演じた一条天皇、崩御…三条天皇も即位早々不穏【光る君へ】
行成がなぜここまで、道長のために?
その苦渋の決断を後押ししたのは、天皇を心から敬愛しながらも、道長強火担でもある藤原行成。彰子を中宮にした「一帝二后」でも天皇の説得に一役買ったが、今回もまた「前例があるので、必ずしも第一子を東宮にする必要はない」と「前例」を盾にして押し通し、二度に渡って道長の出世を助ける役割を果たした。 行成がここまで、道長のために再三身を粉にした理由はいろんな説がある。そこに「道長LOVEだから」という、シンプルだけど決してバカにはできない理由を付けたことで、その行動が権力ドロドロというより、なんだかピュアなものに思えてしまうというのは、脚本家・大石静の大いなる発明だろう。とはいえ天皇が亡くなったことで、彼の板挟み状態もこれで終了。崩御後に行成が流した涙は、悲しみと同時に少しばかりの安堵も含まれていたのかもしれない。
即位早々、不穏…三条天皇が道長に宣戦布告
そうして新たに即位したのが、一条天皇より年上にも関わらず、25年間も東宮の身に甘んじていた居貞親王。そりゃあ「一条天皇、そろそろヤバいってよ」って聞かされたら、ようやく俺のターンが来た! と浮き足立つだろう。とはいえその喜びがあまりにもあからさまだったので、SNSでは「ウキウキが隠せておらん!」「どう見ても病を案じてる顔とちゃう」「顔がニヤついてるぞ」などのツッコミの嵐となった。 居貞改め三条天皇は、ずっと道長を「叔父上」と呼んでいたように、道長のもう一人の姉・超子と冷泉天皇(一条天皇の3代前)の間に生まれた皇子。つまり道長にとっては一条も三条も、叔父と甥の間柄という点では変わりがない。しかし一条が外戚とズブズブの関係だったため、なにかと遠慮がちだったのに対して、三条は7歳で母を亡くしたこともあり、外戚との縁が一条ほど強くない。苦労もあったろうが、その分顔色をうかがう必要もないというのは、ここに来て大きなアドバンテージとなった。 実際に「言いなりにはならぬ」と、ひそかに宣戦布告をしていた三条天皇。ここから道長が「わが世をば」の無双状態となるための、最後の大きな壁ともいうべき存在なのだから、ぜひ良いファイトを期待したい。 そして今回で退場した一条天皇役の塩野瑛久、現在放映中のドラマ『無能の鷹』(ABCテレビ)や、まもなく公開の映画『八犬伝』に出演しているので、ぜひそれでロスを解消して・・・と言いたいが、どちらも一条天皇とのギャップが激しい役なので、逆にあの麗しいお上ぶりが恋しくなってしまうかも!? ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。10月27日放送の第41回「揺らぎ」は、新しく即位した三条天皇と道長が対立を深めていく一方、まひろの娘・賢子(南沙良)と若武者・双寿丸(伊藤健太郎)の仲が近づいていく様子が描かれる。 なおNHK総合は夜8時から「衆院選開票速報2024」を放送するため、夜7時10分に放送開始時間を変更する。NHKBS、BSP4Kは通常通り放送。 文/吉永美和子