「闇バイト詐欺」に暴力団が介在、資金獲得に「トクリュウ」活用…捜査関係者「組員の羽振りがいい」
10代の姉と弟が「闇バイト詐欺」に勧誘するリクルーター役として熊本県警に逮捕された事件は、勧誘団の指示役とみられる組員の逮捕に至ったことで、暴力団の介在が明らかになった。末端の一般人ばかりが摘発され、「組織」の姿が見えてこない「闇バイト強盗」とは異なる展開を見せている。県警は、暴力団が特殊詐欺などの資金獲得活動(シノギ)に、新たに「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」を活用しているとみて全容解明を進める方針だ。 【図表】闇バイト募集事件などの構図
インスタに「短期で高収入」
「全国の闇バイト事件の中で、組員の逮捕に至ったケースは珍しい」。熊本県警幹部はこう強調する。
10月に、24時間で投稿が消えるインスタグラムの「ストーリーズ」上に書き込まれた募集が発端だった。「短期間で高収入、やりたい人いたら連絡ください」。応募した男子高校生が県警に相談し、県警は11月1日、この投稿をしたとして、熊本市の飲食店従業員の女(18)と、弟で高校生の少年(16)を職業安定法違反(有害業務の募集)容疑で逮捕した。同法は「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」での労働者募集などを禁じており、これを適用した。
姉弟は指示役から投稿の依頼を受けており、県警は同5日、指定暴力団道仁会(福岡県久留米市)系組幹部(28)を、同26日にも無職男(19)を相次いで逮捕した。
捜査関係者によると、組幹部が闇バイトのリクルーターのリーダー格とみられ、指示は組幹部から無職男を通じて女に伝わっていた。指示役らは複数の携帯電話を使い、アカウント名を頻繁に変えながら闇バイトを募集していたとみられる。
男子高校生のスマートフォンなどを調べたところ、「(特殊詐欺の実行役の)受け子、出し子は低リスク」といった趣旨のやりとりや、詐欺とは別の犯罪をうかがわせる言葉も確認された。
若手組員が中核
組幹部が所属する道仁会の傘下組織は福岡県南部が拠点だが、熊本県内の若手組員が多いとされる。福岡県警の捜査関係者は「組員の羽振りがいい。特殊詐欺や繁華街でのみかじめ料、風俗店の営業収益などで稼いでいるのだろう」とみる。