自民2勝…終始逆風、笑顔なき勝利 <苦闘の行方 衆院選ながさき2024・上>
27日午後11時過ぎ、長崎県諫早市内の選挙事務所に入った長崎2区の自民党前職、加藤竜祥氏(44)は、再選の歓喜に沸く支持者らに深々と頭を下げ続けた。「笑ってよかとぞ」。神妙な顔つきでマイクを握った瞬間、会場からやじが飛び、ようやく表情が和らいだ。 党派閥裏金事件を受けた「政治とカネ」問題で加藤氏には終始逆風が吹いた。当初は「楽観ムードがあった」(選対幹部)が、序盤に立憲民主党前職の優勢が報じられ「自民支持の各種団体にエンジンがかかった」と関係者は証言する。自らの政治資金問題で比例重複が認められず、「最後まで緩まなかったのが勝因」との声もある。 一方で、区割り変更に伴い2区に再編された大村市など旧3区の3市では、いずれも敗北した。中でも保守地盤の壱岐、対馬両市での黒星には衝撃が走った。旧2区でも大票田の諫早市で794票差まで詰められ、「投票率が高かったら危なかった」と関係者は口をそろえる。地元島原半島の投票率も前回を下回った。 ある選対幹部はこう指摘する。「自民の各支部に頼るのではなく、後援会組織を市町単位で再構築しないと次は厳しい」 自民への逆風を周到な準備ではね返したのは3区の金子容三氏(41)。1年前の補選で戦った旧4区と今回の3区が重なる4市1町で、すべて得票が上昇。新たに加わった離島市町も立民候補にダブルスコアの差をつけた。「(投票4日前の)水曜日には抜け出していた」。情勢分析してきた陣営関係者は一夜明け、こう打ち明ける。 陣営は1年前の4区補選で負けた佐世保市の“奪還”に燃えていた。各地の自治協議会単位で後援会組織をつくり、市全域に網をかけた。選挙戦に入るとこれがフル回転。こうした手法は選挙巧者として知られた前市長、朝長則男氏の戦い方と重なる。結果、同市で約2800票差をつけ、快勝の原動力になった。 県議の1人は市町別の得票数を眺めながら目を細める。「よくやったと見るか、まだ伸びしろがあると見るか…。後者だろうな」 一方、県都・長崎市の1区では自民新人の下条博文氏(49)が荒波にのみ込まれた。陣営は「政策では負けない」と自信を深め、小選挙区で敗れても比例復活の目は十分あると踏んでいた。しかし、投票箱が閉じた直後に国民民主党前職の「ゼロ当確」が報じられた。下条氏は約4万票差の大敗を喫し、陣営幹部は「逆風が強過ぎた」と嘆いた。 自民県連の古賀友一郎会長は、しぼりだすように言った。「おわびから入らなければならない苦しい戦いだった。下条さんを巻き込んでしまった」 ◆ 衆院選は「政治とカネ」で与党に逆風が吹く中、自民が県内3小選挙区のうち2議席を確保。野党は全国的な躍進をよそに、比例復活を含む2議席の獲得にとどまった。与野党それぞれの苦闘と今後の戦いの行方を追う。