「ポイント禁止」反応割れた大手4社◆誰が損?ふるさと納税規制の裏側【時事ドットコム取材班】
ふるさと納税の寄付者に対する仲介サイトのポイント付与が禁止されることになり、波紋が広がっている。仲介サイト大手4社の反応は割れており、中には規制撤回を求める署名を集め始めた企業も。総務省が規制に踏み切った背景には何があり、誰が損をするルールなのか。仲介サイトや専門家に取材した。(時事ドットコム取材班キャップ 太田宇律) 【写真】「断固反対、傲慢すぎる」楽天・三木谷氏の投稿 ◇「断固反対」猛反発した楽天G 総務省は2024年6月25日、利用者にポイントを付与する仲介サイトを使って自治体が寄付を募ることを、25年10月以降は禁止すると発表した。主な理由は、ポイント付与をめぐる仲介サイト間の競争過熱。各自治体がサイト側に支払う手数料がポイントの原資に含まれているとすれば、規制によって自治体の手数料負担が減ることが期待されるという。 発表に対し、ふるさと納税の仲介サイト大手4社の反応は割れた。反対の立場を鮮明にしたのは、「楽天ふるさと納税」を運営する楽天グループ。三木谷浩史会長兼社長は自身のX(旧ツイッター)で「地方に恩返しという思いをぶっ潰そうとしている。断固反対する。傲慢すぎる」と猛反発した。 楽天ふるさと納税のサイト上では、総務省の発表について「自治体と民間の協力、連携体制を否定するもの。地方の活性化という政府方針にも大きく矛盾する」と批判する声明を公開。「政府、総務省に強く申し入れたい」として、ポイント付与禁止の撤回を求めるオンライン署名を呼び掛けている。 ◇賛成?静観?大手サイトに温度差 他の大手仲介サイトは、それぞれ温度差のある反応を見せた。 「ふるなび」を運営するアイモバイル(渋谷区)は、ポイント禁止について「制度の適正化および当社や寄付者にとっては一長一短あると受け止めている」と取材に回答し、賛否には言及しなかった。楽天ポイントなどに交換できる「ふるなびコイン」については、「既に付与済み、または付与予定のものは引き続き利用できる」とサイト上で説明しているが、25年10月に向けた具体的対応については明らかにしていない。 「さとふる」(東京都中央区)は、「ふるさと納税制度が安定的に運用され、今後の健全な発展につながる良い整備であると考えている」と賛成の立場。禁止される25年10月までに、PayPayポイントなどに交換でき、利用実績に応じて付与率や交換率が段階的に変わる「さとふるマイポイント」をどうするかについては「決定していない」と述べるにとどめた。 ◇ポイント制早期撤退、なぜ? 大手4サイトの中で唯一、現在ポイント付与をしていないのが「ふるさとチョイス」だ。23年4月、他社ポイントに交換できる「チョイスマイル」がもらえるサービスを開始したが、半年ほどで付与を終了していた。運営企業の「トラストバンク」(品川区)に経緯を取材した。 同社の宗形深執行役員は、「寄付者の方からすると、どの仲介サイトを使うか判断する上で、やはりポイントは一つの基準になる」と説明。国内初のふるさと納税ポータルサイトとして、ふるさとチョイスを2012年9月に開設したが、後発の仲介サイトが次々にポイント付与を始めてシェア争いが激化する中、同社でもポイント制の導入を検討することになったと振り返る。 ただ、宗形氏は「利用者が少しでも高いポイント還元率を求めて寄付先を探すようになると、どこのどんな自治体に寄付したのか覚えてもらえないという問題意識が当初からあった」と明かす。応援する自治体とさまざまな形で関わる「関係人口」を増やし、地域活性化を図るというふるさと納税の趣旨に、ポイント制はそぐわないのではないか。そうした社内議論の末、チョイスマイルの付与は短期間で終了することにしたという。