高年収企業キーエンス、給与アップは控えめか-前期3期ぶり営業減益
(ブルームバーグ): 今年の春闘で大手企業を中心に記録的な水準の賃上げが相次ぐなど物価高の中で昇給への機運も高まっている中、日本を代表する高年収企業として知られるキーエンスの社員の給与の増加は控えめなものにとどまる可能性がある。同社は業績に連動した給与や賞与の体系を取っており、前期は3期ぶりの営業減益となったためだ。
キーエンスの山本寛明経営情報室長は25日の大阪取引所での決算会見で賃上げへの考え方について問われ、業績に連動した給与体系を採用しており、物価上昇を無視しているわけではないが、業績を上げることがインセンティブになる方が「最も大切」との見方を示した。
キーエンスが同日発表した決算によると、前期(2024年3月期)の営業利益は前の期比0.8%減の4950億円と3期ぶりに減益となった。国内で設備投資に慎重さが見られ、日本での売上高が前の期比1%減となった。海外でも欧米の設備投資は底堅く推移したが、アジアで景気の弱さがみられたとしている。連結売上高と純利益は過去最高益を更新した。
キーエンスは営業利益率が50%を超える高収益企業。時価総額では国内企業5位で給与水準では突出した存在だ。有価証券報告書によると23年3月時点で従業員2788人の平均年間給与は前年比4.4%増の約2280万円。10年前からでは約1.6倍となっている。今年3月時点での数字は例年6月ごろ公表される前期の有価証券報告書に記載される見通しだ。
ブルームバーグ・インテリジェンスの北浦岳志アナリストは3月7日付のリポートでキーエンスの給与水準について、短期的には足元での業況悪化による業績成長の停滞や増員により減少の可能性もあるが、「先を見据えた建設的な増員ととらえられる」と指摘した。
キーエンスはセンサーや画像処理システムなど生産工程の自動化に貢献するファクトリーオートメーション(FA)関連製品を広く手掛ける。自社工場を持たず、製品の約7割が世界初や業界初といった独自のビジネスモデルを確立することで、製造業の中でも高い収益力を維持する。中田有社長は会見で、「常に過去最高を更新していく、去年の自分たちを超えていこうということでやっている」と話した。