俳優・奥野瑛太、最新主演映画は東日本大震災から3年後の福島が舞台。昨年撮影「震災後12年の景色が映っている」
東日本大震災から12年後の福島で撮影
2024年8月17日(土)より主演映画『心平、』が新宿K’s cinemaほか全国で順次公開される。この作品は、東日本大震災から3年後、2014年の福島にある小さな村で余波のなかを生きる家族の姿を描いたもの。 奥野さん演じる主人公・心平には、軽度の知的障がいがあり、兼業農家の父(下元史朗)を手伝いながら暮らしていたが、3年前に起きた東日本大震災による原発事故によって農業ができなくなってしまった。それ以来、妹(芦原優愛)の心配をよそに職を転々としている。今は無職の心平は、立ち入りを制限された町に足を踏み入れるようになって…。 ――撮影はいつ行われたのですか。 「撮影は2023年の夏、8月です。その3、4カ月ぐらい前にお話をいただいて、撮影期間は約2週間でした」 ――お話を聞いたときはどう思いました? 「台本を読んで東日本大震災以降の無視できない問題を形にしようとしている脚本家と監督がいるんだなと思いました。そこに対してすごく共感しながら、経年劣化しないでちゃんと問題意識を抱えているということを真摯に受け取りました」 ――軽度の知的障害がある主人公を演じるということに関してはどのように? 「知的障害にもIQ指数による段階があり、今作の主人公の心平は、捉えることが困難な個性とそのグラデーションのなかで、どこにこの心平という主人公を置きたいのかということについて、監督をはじめ全員で悩みながら考えました。 最終的に専門家の方にアドバイスをいただき心平にはどのような特徴があるのか。脳のメカニズムや心理的な部分がどのように働きやすいかを踏まえた上で、言動や行動を脚本にして、やっと踏み切ったという感じです。 脚本で描かれている心平のような方は、おそらく自分たちの周りにもすぐそばにいて、普段とくに気に留めることなくすれ違っていると思います。それぐらい曖昧な余白のなかで僕たちは何気なく生活しているんだなと。そこに対して役作り、言語的な知識とか学術的なことだけではやっぱり追いつかないところがあったように思います。 もっと言えば、これはフィクションですから、登場人物たちによってどう温かい話になるかというところも含めて監督と話し合いました。自分がこうしたいとか、こういう風に見てもらいたいというようなことは一切思わず、作っていった感じです」 ――避難したまま戻ってこない人たちの家もありますが、ビー玉など自分なりに気に入った物を持ち帰るという行為は、窃盗になりますが彼自身はその意識はあるのでしょうか。 「それぞれ観てもらって感じた通りに受け取ってもらえたらいいと思います」 ――演じていて一番難しいと思ったところは? 「やっぱり『今しかない!』という一瞬の感性の連続なので、難しかったです。それゆえに他人の目にはピュアに映ると言いますか。明らかに心平の個性であり魅力なので。なかなか追いつけないなと思いながらも、一番大切なところだなと思っていました」