「廃止してくれないか」と市がJRに提案する路線に乗ってみた ガッツリ朝ラッシュ なのにナゼ?
自治体が廃止を要求!?
和田旋回橋を過ぎると、車窓右側にサッカーJ1「ヴィッセル神戸」の本拠地である「ノエビアスタジアム神戸」が見えてきます。和田岬駅からは近隣にあるのですが、ダイヤが偏っていることもあり、サッカーの観客輸送としては奨励されていないのが現状です。 「ノエビアスタジアム神戸」を通り過ぎるとすぐに和田岬駅に到着しました。ユニークなのは、改札口などは何もなく、ホームに何か所も設置された階段から、降車客が街中に散らばっていく様子です。かつては三菱重工兵庫工場まで線路が延びていましたが、駅は現在1面1線の行き止まり。大量の乗客を降ろした後はわずかな乗客を乗せて、兵庫駅に折り返してきました。 なお、和田岬駅では神戸市営地下鉄海岸線と接続しています。同線を運行する神戸市は、なんと和田岬線の廃止を求めています。自治体が黒字線の廃止を求める事例は非常に珍しいですが、理由は「兵庫運河を活用した臨海部まちづくりを進めるうえで、和田岬線が船舶の通行や、歩行者が回遊できるルートを阻害している」というものです。 和田岬線を廃止すれば、まちづくりだけでなく、赤字の地下鉄海岸線の活性化がなされることもあり、得失が難しい問題ともいえます。JR西日本は「黒字線なので廃止をするつもりはないが、地元の総意が廃止なら検討する」としています。 乗車した実感としては、日中はほぼ運行されていない和田岬線ですから、むしろ和田旋回橋を回転させられるようにして船舶通過を実現すれば、全国的にも珍しい観光資源になるようにも感じられました。 ※スタジアム名称を修正しました(6月11日21時00分)。
安藤昌季(乗りものライター)