バイクスの未来、どうなる? B2愛媛オレンジバイキングス・北野順哉社長に聞く
バスケットボールBリーグは、2016年の誕生から8度目のシーズンが終わりに近づいている。愛媛県を本拠地に初年度から参戦しているBリーグ2部(B2)の愛媛オレンジバイキングス(バイクス)は今季、第29節を終えて西地区6位と苦しんでいる。長く目標に掲げてきたB1昇格プレーオフ進出になかなか手が届かず、もどかしい思いを募らせてきたブースターは少なくないだろう。 1勝に喜び、1敗を憂う。ファンにとってのプロスポーツの楽しみ方はこうだ。だが、愛するクラブの未来を語るのに、「勝ち負け」だけを気にするわけにはいかない変化が、Bリーグに起ころうとしている。 2026―27年シーズンから、競技ではなく事業の成績でクラブをカテゴリー分けする新制度「B.革新」が始まる。既に今季、新たなカテゴリー分けへの審査が始まっている。バイクスが目指すのは、3カテゴリーの中間にあたる「Bリーグ・ワン(Bワン)」。売上高4億円、平均入場者数1500人などとする要件を、バイクスはクリアできるのか。新制度の中で、クラブの未来をどう描くのか。昨年9月に就任した北野順哉社長(49)に投げ掛けた。 「バイクス、どうなるんですか?」 Q 競技力ではなく「経営力」による新たなカテゴリー分けが始まります。これまでならライセンス要件を満たしていれば、競技成績次第で昇格できました。新しいルールでは、売上高や観客数といった条件をクリアしないと昇格できません。どう受け止めていますか? 北野 ある意味、ハードルが高くなったなという印象はありますね。 私は障害者就労支援施設などを運営するマルク(松山市、23年8月期売上高5億7900万円)で社長を務めています。マルクは2019年に東京証券取引所傘下の「東京プロマーケット」に上場しました。この時も上場を目指す途中で東証の再編が重なり、条件が斜め上にスライドしました。すごく似ているなと感じています。目指してきたステージが「乖離した」というイメージがあります。 ただ逆に言うと、事業成績さえクリアできれば、必ず上のカテゴリーにいけるわけです。社長に就任して思うのは、スポーツビジネスの最大の特徴はクラブのコストの大半がトップチームの運営費だということです。大きなコストをかけているのに、その結果にあたる競技成績はコントロールできないというのは、すごく特徴的で難しいところだと思います。 思い切ってB1クラブと同じくらいの資金をチームに突っ込んでも、優勝できるとは限りません。ジャイアントキリングが生まれる楽しみがある一方で、すごく不確定要素があります。普通のビジネスなら、例えば店舗をどれだけ出せば、これだけの売り上げがある、ということは見えるんですけどね。 新制度で不確定な要素に振り回されるのではなく、経営上の課題が明確になったと捉えています。道のりは遠くなったかもしれませんが、クリアしていくべき課題をはっきりと示してくれました。ブースターを増やして規模を大きくするには、やはり勝つことが一番ですから、競技成績も引き続き重要です。 Q Bワン参入には、売上高4億円、平均入場者数(仮ライセンス)1500人が必要です。バイクスは昨季の売上高は3億5571万円、平均入場者数は940人でした。今季既に審査が始まっていますが、今の状況はどうですか。 北野 正直かなり厳しいです。大資本が入っていない地方の小さなクラブにとって、かなり高いハードルです。現状、今季の1500人は困難で、来年のライセンス審査がある3月末までの合計で1500人を超えるために動いています。 観客数が苦戦しているのは、今季はホーム戦で松山市外の地方開催が多かったからです。いろんな場所でプロスポーツの魅力をお届けしたいという思いと、メーンアリーナの松山市総合コミュニティセンター(コミセン)の利用調整で、ホーム戦30試合のうち約半分がコミセンではない会場でした。昨年10月にねんりんピックが行われた関係で、今季は特に市外開催が多くなっています。 松山市外の会場では、そもそものキャパシティーが700~1000人ぐらいです。しかし、そういった事情は勘案してもらえません。コミセンは立ち見客を除けば約2400人の収容人数ですが、それはBワンの本ライセンスで平均値としてクリアしなければならない数字です。集客力とは別の話として、地方クラブが使っている会場のキャパシティーが、リーグの想定と少し乖離があると思っています。
愛媛新聞社