【Bリーグ】ありがとう!NICK THE LAST ~ニック・ファジーカス引退試合~(前編)
第2クォーター:技あり長谷川の3ポイントシュート祭
引退するニックの活躍に、まだまだ現役を続ける選手たちも黙っていない。8点を追うWHITEは、練習生から這い上がってきた益子拓己が元気に走って勢いづける。篠山も、ニックが伸ばす長い手の上から3ポイントシュートを沈め、汚名返上。長谷川技はノーミスで4本の3ポイントシュートを決めた。 長谷川とニックは同じく12年前、当時の東芝ブレイブサンダースに入団。JBL時代のレギュラーシーズンは42試合しかなかったが、「今は60試合に増え、体力的にも年齢的(※38歳)にもきついところは出てきたんだと思います」と長谷川は納得しつつ、未練もある。 「今はリカバリーもいろいろな方法が増え、それをニックも取り入れ、入念な体のケアをずっとしていました。気持ち的にしっかり持てるようになっていれば、まだまだできたんじゃないかなぁとは思います」 技あり長谷川が猛追したが、51-48でREDのリードは変わらず。後半はニックがWHITEのユニフォームに着替え、3点を追う。
第3クォーター:バスケの華・ダンク祭
後半開始早々から華やかなダンクが降り注ぐ。ロスコ・アレン、トーマス・ウィンブッシュ、そしてサプライズ登場の渡邊雄太もブレイブレッドのユニフォームを着て、豪快なアリウープを決めた。5千人満員のとどろきアリーナを轟かせる。 WHITEを率いるのは、佐藤賢次ヘッドコーチ。ニックとの12年間を振り返り、「誰よりも真摯に向き合い、オフシーズンは毎年毎年パワーアップして帰ってきたのが一番印象に残っています。結果を残すために取り組む姿勢を教えてもらいました」と感謝し、川崎のレガシーとして受け継がれていく。 第3クォーターを終え、76-73と3点差のまま。ニック率いるWHITEの逆転勝利へ向けた完璧なシナリオでクライマックスへ向かった。
第4クォーター:お祭り男・辻直人
REDは、1日限りのヘッドコーチに戻った北卓也GMが指揮を執る。WHITEに移ったニックのパフォーマンスを「後半は疲れてきたことで、シュートが落ちてきたなぁと思って見ていました」。しかし開始早々、ニックの3ポイントシュートで76-76、同点に追いついた。 「第4クォーターは盛り返して決めてきましたね。私が現役のときよりも年齢(※35歳で引退)は行っていますが、ここまで決めるか…。まだ引退はしなくていいんじゃないの、とニックには言いました」と北GMの言葉は、見ている多くの方も同じ思いだったはずだ。 仲間たちがボールを預け、マシンの如く決めるニックの活躍でWHITEがリードを広げて行く。そこに割って入ってきたのが辻直人(群馬クレインサンダース)だった。2012年にニックと同期入団し、9シーズン同じユニフォームを着てきた。前半はREDだったニックとともに、スターターとして並んだときは「本当に懐かしいと感じました」。 「できればオフシーズンではなく、バリバリのレギュラーシーズン中にできたらもっと良いプレーができたと思うんです。今は、体が全然動かないんですけど、なんか気持ちがすごく昂ぶりました。本当の試合前のようなワクワク感を感じることができたので、それも今日のひとつ大きな思い出になりました」 気持ちで体を動かし、3ポイントシュートを決めたお祭り男が対抗する。残り22秒、そして2.2秒と、ニックの背番号と同じタイミングでうまくゲームが止まる。互いにタイムアウトを取り、勝利の作戦を立てる。2.2秒、1点差で追うREDボールではじまったラストプレー。お祭り男にボールが渡り、逆転シュートを狙う。しかし、目の前にそびえ立つニックが、ガッツリとブロックで阻止。105-104の接戦をWHITEが制し、笑顔溢れる宴を終えた。 40分間で73点を決めたニックはキャリハイを記録し、「引退を撤回しようかな」と北GMと談笑していた声が、会見テーブルに置いたICレコーダーにしっかりと録音されていた。