【威風働々】ラジウム玉子作り(福島市) 温泉浸し極上の食感
福島市飯坂町の「阿部留商店」は創業140年を超える老舗で、2代目店主の阿部義雄さんが大正時代に「ラヂウム玉子」を作り始めた。3代目の孝義さん(74)らは温泉街の一角に立つ共同の加工場で日々、温泉玉子作りに励む。室内には湯気とともに、温泉独特のほのかな香りが漂う。 ラジウムは、1898(明治31)年にキュリー夫妻が放射性元素として発見した。数年後、日本で初めて、飯坂温泉の湯質に含まれることが確認された。コンテナに入った卵を70度前後の源泉かけ流しの温泉に1時間ほど浸すと、黄身は固めの半熟、白身はとろっとした看板商品が出来上がる。 1日当たり3600個ほど作る。季節や水温、色によって浸す時間が異なり、職人の経験が味、食感の決め手となる。飯坂温泉の名物となり、土産物や家庭の食卓を彩る品として親しまれる。孝義さんは「卵好きな地元の人々に育ててもらった」と感謝の言葉を胸に、地域の味を守り続ける。
【メモ】◇阿部留商店▽住所=福島市飯坂町湯野橋本5