半導体規制を強化する米国、バイデン・習近平両氏の首脳会談に及ぼす影響は? 板挟みの米政府と経済低迷の中国…お家事情が関係悪化の緩衝材に【2023アメリカは今】
バイデン米政権は10月17日、国家安全保障上の懸念から、先端半導体を巡る中国への輸出規制を強化すると発表した。バイデン政権は昨年10月にも強力な輸出規制を導入したが、今回の措置はそれでも残ったグレーゾーンや抜け道への対応を狙ったものだ。 米中両国は11月中旬に米サンフランシスコでバイデン大統領と習近平国家主席との首脳会談を模索する中、どのような影響が想定されるのか。米国の有識者らに話を聞いた。(共同通信ワシントン支局 金友久美子) ▽トランプ政権時代の手法広がり、新次元「10月7日ルール」は日本にも波及 最初に、これまでの米国の半導体規制を巡る経緯を振り返りたい。バイデン米政権は昨年10月7日に半導体に関する新たな輸出管理規則を発表した。先端半導体やそれを使ったスーパーコンピューター、半導体製造装置が輸出管理の対象となり、中国へ輸出する場合は米商務省に申請しても原則不許可になる事実上の禁輸措置だ。中国の施設で先端半導体の開発や生産の支援を行う米国人の行動も米政府への許可申請対象とした。 また、日本など米国以外の国を経由した輸出に関しても、米国の技術やソフトウエアを使った機器が中国へと再輸出されることを規制するルールが設けられた。これは、もともと2020年のトランプ政権時代に中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置として実施された手法で、ロシアのウクライナ侵攻以降はロシア向け制裁で多用された。
昨年10月に公表された一連の対中半導体規制はその広範さから米国内でも衝撃が広がり「10・7ルール」と呼ばれるようになった。米首都ワシントンのシンクタンクなどではこの1年間、「10・7ルール」が政治、経済両面で話題をさらった。米政権が昨年10月以来、半導体製造装置に強みを持つ日本やオランダにも同様の規制を講じるよう協調を求めたことから、影響は米中のみならず、世界的に広がった。 ▽エヌビディア、キルギスで抜け穴…1年かけて規制更新 10・7ルールから1年が経過し、今回は規制の抜け穴をふさぐためのさらなる政策更新が施された。主な特徴は4点だ。 1点目は、人工知能(AI)向け先端半導体での規制強化だ。中国輸出用として規制基準をやや下回る製品が普及したことを受け、基準を変更。さらに「グレーゾーン」と言われるような基準値未満の性能の半導体についても新たに通知対象とした。米半導体大手エヌビディアが中国市場向けに開発したAI用半導体「A800」と「H800」が念頭に置かれている。規制逃れ製品が今後も続く「いたちごっこ」の可能性を見据え、米政府側に禁輸措置の対象を決める権限を幅広く持たせた。