異例の舞台で落語会 レトロ酒場に笑い咲く 大阪・十三・神戸・新開地 活写2024
巨大なシャンデリアが照らすステージで、スポットライトを浴びるのは落語家の月亭太遊(40)。ビールケースを積み上げた即席の高座から響く軽快な落語に会場が笑いに包まれる。昭和44年創業当時のきらびやかな輝きを残すキャバレー「グランドサロン十三」(大阪市淀川区)で開かれた落語会のワンシーンだ。 【写真をもっとみる】老舗キャバレー「グランドサロン十三」のフロアに、ビールケースを積み上げ特設された高座で落語を披露する月亭太遊 会を主催したのは、神戸市兵庫区の歓楽街・福原の片隅にあるカフェバー「ドミロン」の店主、酒井明子さん(37)。築50年を超え昭和のにおいを感じさせる元スナックの店内で毎月26日に「ドミロン落語会」を開催している。 落語会を始めたのは、定席の演芸場「神戸新開地・喜楽(きらく)館」が近くにあり、「落語でもできたら」という思いつきがきっかけだ。SNSへの投稿を目にした落語家の協力で令和4年11月に初開催。一度だけのつもりが、高座と客席の距離の近さから生まれる一体感が楽しめるとあって、常連客や落語ファンの口コミで評判が広まり毎月開催されるようになった。 何よりも落語の魅力にとりつかれたのは酒井さんだ。ハードルが高いと思っていた世界に登場するのは身近にいそうな親近感がわく人ばかり。「まるで自分が物語の中にいるかのような気分になって没頭して笑っていられる」。今では時間を見つけては寄席に足を運ぶファンの一人に。誰よりも毎月の落語会を楽しんでいる。 グランドサロン十三での開催を決めたのも〝好き〟という思いからだ。店内の撮影会に参加して一目ぼれ。「どうしても昭和のレトロなギラギラした空間と落語を組み合わせたかった」と、出演者も酒井さんの「推し」たちに打診した。〝好き〟を詰め込んだ会には約180人が詰めかけた。 指名を受けた月亭太遊は「ドミロン落語会は冒険も挑戦もできる場所」と話し「ドミロンさんの推しに対するパワーがすごい。お客さんにも思いが共有されてるのもすごい」と笑う。 2周年を迎える11月26日は、喜楽館での開催を決めた。約200席のうち半数はすでに販売済み。「たくさんの人が一斉に笑う顔をみるのは、本当に幸せ」と酒井さん。笑い顔が会場いっぱいに広がると思うと今から楽しみだ。(写真報道局 南雲都)