「支援施設なければ死んでいた」 児童養護施設や里親家庭を巣立った若者「ケアリーバー」 生活困窮、ひきこもり…続く苦境
児童養護施設や里親家庭を巣立った若者「ケアリーバー」が、ひきこもりや生活困窮に陥るケースが中国地方でも相次いでいる。国は原則18歳までとしていた支援の年齢上限を撤廃するなどしているが、自治体の取り組みや支援態勢にはばらつきがある。当事者や連携を強める支援団体の活動を追った。 【写真】アフターケア事業所で支援員と話す女性(手前)。「自分のペースでいい、と応援してくれるのがうれしい」 岡山市北区の住宅街の一角。ケアリーバーの生活・就労支援や相談を担うアフターケア事業所「en(えん)」で、市内の女性(25)が支援員と近況を語り合っていた。「何でも話せる家みたいな場所」。女性はリラックスした表情で笑った。 育児放棄され、生後2カ月ごろから岡山県内の複数の施設や里親家庭を転々とした。中学では「親に捨てられた子」といじめに遭い、不登校になった。施設職員や里親とトラブルが絶えず、暴れてけがをさせたこともある。「普通の愛情が欲しかった。寂しさや怒りをどう表したらいいのか分からなかった」と振り返る。
不信感は拭えず
16歳の時に児童相談所が両親に打診し、同居が決まった。だが何を話しても、一緒に食事をしようと促されても「自分を捨てた相手」との思いが拭えない。耐えられず3日で家を出た。 通帳を開くと、アルバイトでためた20万円が口座から消えていた。同居に当たり、両親に通帳を預けたわずかな間に引き出されたらしい。ためられていたはずの月々の児童手当の行方も分からない。両親とは連絡が取れなくなった。 児相に駆け込み、「en」を運営するNPO法人「子どもシェルターモモ」の自立援助ホームに入った。10カ月ほど過ごした後、同法人の支援を受けてアパートで1人暮らしを始めた。 「自立」とは程遠かった。生活保護費など月11万円を生活費に充て、引きこもった。「親にお金を奪われ、働く意欲を失っていた」。独りでいるとさみしさに襲われ、親への憤りがぶり返す。昼夜逆転した暮らし。ストレスからスナック菓子やインスタント麺の暴食を重ね、1年で30キロ近く体重が増えた。