JR「混雑偏重 = 快速のせい」はデタラメ? 議論すべきは「有効本数」である
利便性評価の新提案
最近、京葉線の「通勤時間帯の快速系統廃止問題」が鉄道行政を騒がせている。 快速列車の運行や停車駅については、特に神奈川県鉄道輸送力増強促進会議のように、国から市町村まで鉄道ダイヤの本当の専門家がいない場合、自治体が鉄道事業者に意見をいう傾向がある。 【画像】えっ…! これが60年前の「新横浜駅」です(計20枚) 列車接続で解決できる問題なのに、やみくもに増便や停車駅の増設を求め、混雑の偏重を考慮せず、快速の設定や復活を求めている。 では、本当に便利でよい路線とは何かを考えるには、どのような視点が必要なのだろうか。本稿では、路線の利便性を 「有効本数」 で見ることをひとつの指標として提案し、いくつかの路線の事例を紹介する。なお、現行ダイヤは2024年3月改正時点のダイヤに基づいている。
友人からの教え
有効本数とは 「ある目的地に行くのに、追い抜きや接続を考慮した上で、実質的に使える列車の本数」 のことだ。10年ほど前に某大手電鉄会社に勤務する友人が、当時の東急田園都市線の日中ダイヤが不便だったことについて、この考え方を用いて筆者(北村幸太郎、鉄道ジャーナリスト)に語ってくれた。 その当時、田園都市線長津田駅発の日中の上り列車は1時間あたり急行4本、各駅停車8本の運転だった。本数だけ見れば12本もあるため便利そうに見える。しかし、当時の各駅停車は必ず途中の鷺沼、または桜新町で後続の急行に抜かれるため、最速で渋谷に行こうとすれば鷺沼か二子玉川で急行に乗り換える必要があった。 つまり、次の各駅停車に乗っても、結局は 「後続の急行に乗り換える」 ことになる。それなら長津田で次の急行を待っても到着時間は変わらない。ということは、実際には長津田から渋谷へ行くのに使える列車は1時間に4本の急行しかないことになる。この4本を友人は「有効本数」という言葉を使って表現していた。 その後のダイヤ改正で、東急は大井町線直通急行(途中の二子玉川で渋谷方面行きの各駅停車に接続)を毎時2本新設。従来は朝の上り限定だった準急(長津田~二子玉川間のみ急行運転)も毎時2本設定した。 これによって、渋谷への有効本数は毎時8本まで増えた。長津田駅発の運行本数は毎時12本から毎時16本へと1.25倍に増えているが、実際の運行本数に対する有効本数の比率は33%から50%へと1.5倍に増えた。 また、従来は停車本数が毎時8本なのに対して有効本数は4本しかなかった途中の急行通過駅も、すべての各駅停車から同じ途中駅で急行系列車に乗り継げるようになったことで、有効本数比率は100%になった。各駅停車と急行系列車の本数の比率が1対1になったからである。 これらの改善は、単純に列車本数を増やした以上の効果を生んだことになるのではないだろうか。なお、現在はコロナ禍でダイヤを見直し、1時間あたりの本数も内訳も変わっているが、最大毎時9本の有効本数を確保しているようだ。