太陽系の外側は予想よりも “埃っぽい” ことが判明 塵の量の実測結果
■塵の量は予想よりも減らないことが判明
Doner氏らの研究チームは、ニュー・ホライズンズのVBSDCの観測データを分析し、冥王星よりもずっと遠くの距離に当たる、太陽から約68億~83億kmの間で測定された塵の量を分析しました。従来の研究では、エッジワース・カイパーベルト天体の数の減少によって、約75億kmの距離から塵の量が減少する縁があることが予測されていました。もし予測通りならば、今回の分析で塵の減少が観測されるはずです。 ところが今回の分析では、測定された領域内での塵の減少がほとんど観測されていないことが分かりました。塵の計測値に基づくと、エッジワース・カイパーベルトの領域が約90億kmを超えていることは確実であり、実際の縁は約120億kmまで、あるいはそれ以上の領域に広がっていると推定されます。あるいは、エッジワース・カイパーベルトは1つのベルト構造ではなく、内側と外側に1つずつベルトがある可能性もあります。 上記の説明はあくまでも仮説であり、塵の量が多い理由は他にある可能性もあります。例えば、太陽放射やその他の何らかの理由で、塵が約75億kmよりも外側へ効率的に運ばれているのかもしれません。あるいは、現在のモデルでは予測されていない、寿命の短い氷の粒が生成されている可能性もあります。 ただし、Doner氏らはこれらの代替説明が成立する可能性は低いと考えています。むしろ、すばる望遠鏡のようないくつかの望遠鏡は、従来のエッジワース・カイパーベルトを大幅に超えた天体をいくつも見つけています。今回の分析結果は、太陽系の外側には実際に無数の天体がひしめいている可能性が高いことを裏付ける成果です。 ニュー・ホライズンズは2回目の延長ミッションに入っており、2040年代に太陽から約150億kmの距離を超えて観測を行うことが予定されています。もしもこの距離でも塵の量が測定できた場合、今回の研究で推定されたエッジワース・カイパーベルトの縁が本当にあるのかどうかを知ることができるでしょう。 Source Alex Doner, et al. “New Horizons Venetia Burney Student Dust Counter Observes Higher than Expected Fluxes Approaching 60 au”. (The Astrophysical Journal Letters) NASA Communications. “NASA’s New Horizons Detects Dusty Hints of Extended Kuiper Belt”. (NASA)
彩恵りり