“重要湿地”のメガソーラー計画中止を「環境や景観損なう」 太陽光発電の乱立が問題化 北海道
北海道東部に広がる馬主来沼(パシクル沼)で民間事業者によるメガソーラー計画を巡り、地元の住民や自然保護団体が釧路市の蝦名大也市長に建設中止を求める要望書と約2万3000人分の署名を提出しました。 国の特別記念物・タンチョウが繁殖しハンノキ林などの水生植物が群落する馬主来沼は、環境省が「重要湿地」に定めています。 地元住民らによりますと、事業者は沼の周辺に12万枚の太陽光パネルを設置する道内最大規模のメガソーラー発電所の建設を計画していて、タンチョウやオジロワシなどの繁殖地で自然が壊される上、管理に伴う除草剤について不明な点が多く、仮に使用された場合はシジミやワカサギなど水産資源や生態系への悪影響も懸念しています。
さらに、地域の「新八景」に選定され周辺住民に親しまれている景観が損なわれ、計画地への交通アクセスも困難なため火災などの災害時にリスクも大きいとして釧路市に規制を強化する条例の制定を求めました。 一方の釧路市も危機感を持っていて、事業者に関連する法律を順守するチェックリストを着工の60日前までに提出するよう2023年7月にガイドラインを策定。 しかし、再生エネルギー事業は経済産業省が推進する国策で、釧路市は条例の制定は難しいとして、国に法規制を厳しくするよう要望しています。
4月に開かれた住民説明会の参加者によりますと、事業社側は「計画を中止する権限がないので国外の親会社に伝える」との返答を繰り返したということです。 地元住民による計画中止の要望の後、蝦名釧路市長は「再生可能エネルギーの促進と自然環境を守っていくことを両立する形を考えていきたい」と述べました。 道内では釧路湿原でのメガソーラーの乱立や世界自然遺産・知床での事業計画の問題が表面化していて、環境に優しいとする再生エネルギーが自然を壊しかねない矛盾を抱え、有効な対策が早急に求められています。