「地震被災住民に新鮮な野菜を」 直売所再開 石川・JA内浦町
農家ら早期の開店要望 価格は控え目に
能登半島地震の影響で閉店していた石川県のJA内浦町が経営する農産物直売所「おくのといち」(能登町)が15日、営業を再開した。地元の被災地を元気づけたいと、農家が早期の営業再開をJAに要望。棚に並ぶ野菜の数や種類は限られるが、農家やJAは「被災した地元住民に少しでも新鮮な野菜を食べてほしい」と思いを込める。 【画像】野菜を並べる坂口さんと休業の告知を取り外す担当者 「少しばかりだけど、地元の人にあったかい鍋物でも食べてもらいたい」。農家の坂口光守さん(63)はそう言いながら、ハクサイやネギを棚に並べた。 管内では大きな揺れや津波の影響で自宅をなくし避難所生活を送る農家も多い。JA営農経済課によると、同直売所には200人を超える出荷者がいるが、この日、出荷できたのは、4人。尾上雅俊課長は「大規模農家ほど被害が大きく、しばらくは休業を予定していた」と明かす。 営業再開を後押ししたのは、「お店はいつ開くの」という農家の声だった。農地や自宅が高台にあったり、海辺から離れていたりして大きな被害を逃れた農家から、開店を希望する声が複数寄せられ、JAが再開を決断した。 営業再開した同日は午前10時から午後3時までの短縮営業。だが、再開を楽しみにしていたという女性客らが開店直後から訪れた。農家が持ち込んだ野菜や花きの他、カップ麺やパンなどJAで仕入れた物資を売った。出荷者の中には、なんとかして被災者の助けになりたいと、通常よりも安い値段で提供した農家もいた。 花を買った男性は「震災で亡くなった人に献花する花が買えず困っていた。開いていて助かった」と話した。 JAによると、管内沿岸部は津波や火災により悲惨な状態。生活がままならないため農地被害の全容把握が進まないという。さらに、被災地では断水が続き、水が出ないため、出荷する野菜が洗えない、買った野菜が調理できないといった課題がある。JAによると、直売所に出荷する農家らの多くは、もともと井戸など自分たちで用水を確保しており、野菜を洗浄できているという。 JAの神田美佐子組合長は「今回の災害復興はかなり長期戦になる。店を開けて普段の風景を少しでも取り戻すことで、避難している人の希望になれればうれしい」と望みを話す。(島津爽穂)
日本農業新聞