Meta社の新しいARグラス「Orion」、商品化は厳しい?
9月25日のMeta Connectにおいて、「Meta Quest 3S」を含むいくつかのメタバース系製品のアップデートが発表されましたが、中でも注目が集まっているのは、斬新なARグラス「Orion」のようです。 Meta社のCEOマーク・ザッカーバーグは、Meta Connectで「まったく新しいタイプのディスプレイ構造による、完全なホログラフィック体験ができる」と宣伝しました。また、このARグラスの開発には約10年を要したとも。
このARグラスは大衆向けなのか?
ARグラスには3つのパーツがあります。中央システムであるコンピュートパック、メガネ、そしてリストバンドです。 メガネ自体は、2010年代前半に再度ブームとなったバディ・ホリー風のフレーム。 Orionの機能の中で一番興味深いのは、手や視線に対応しているニューラルインターフェイスです。 私たちも以前、ARグラスは素晴らしくゲームに向いているということを紹介しましたし、テクノロジーやSFファンは拡張現実を普及させるARグラスを長い間待ち望んでいました。 Orionは、正にその方向ヘと歩みを進めているようです。しかし、このARグラスが市場に出回るかどうかについては疑問視されています。 Meta Connectの翌日、Yahoo! ファイナンスは、このプロジェクトに関わっていた元エンジニア2人が、Orionが市販される実現性について大きな疑問を抱いていると報じました。 この記事によると、Orionのプロジェクトが最初に製作した1000個のARグラスは、100個に激減し、そのうち電源を入れてイメージを表示できたものは約20個だったのです。 開発プロジェクトでのプロトタイプ1個あたりの製作費は6桁台(10万ドル台)になった模様。最終的にOrionが大衆向け製品として日の目を見るかどうかは、いまだにはっきりしません。
Orionの不透明な未来
さらに、Orionの開発部門であるMeta社のReality Labsは、8月の第2四半期決算で44億8000万ドルの赤字を計上しました。赤字は今にはじまったことではないのです。 2020年以降、Meta社のReality Labsは数十億ドルの赤字を出しています。さらに、6月にはReality Labsの従業員約100人を解雇。 筆者を含め一部の人にとって、このような行動はOrionの未来を揺るがすものです。Meta社のOrionの公式発表でも同様の見解が示されています。 「Orionが消費者の手に渡ることはありませんが、これは間違いなく研究用のプロトタイプではありません」と公式発表でも言及されました。 このような発言によって、このARグラスは、たとえ進歩していたとしても、必ず実現するものというより、ホログラフィックの幻想のように思えます。 しかし、10年におよぶ開発期間と数十億ドルがすでに費やされているプロジェクトに、商品化できるという結果がないのであれば、期待しない方がいいでしょう。 このARグラスが近いうちに店頭に並ぶことは、間違いなくありません。それはつまり、残念ながらMeta社の有望な新しいプロジェクトOrionの未来は、依然不透明なままということです。 Original Article: Meta's New Smart Glasses Sound Promising, but I'm Not Sure They'll See the Light of Day by MakeUseOf
的野裕子