【山口県】周南“絆”映画祭で才能開花 「こども昭和カラオケ選手権」で審査員も 朝ドラ「ブギウギ」脚本家 足立 紳さん(51)
Q:足立さんの契機となった「周南“絆”映画祭」へ応募したきっかけをお教えください。 ちょうど2人目の子どもが生まれ、この業界では生きていけないかもと腹をくくった時期でした。最後に書き溜めていた3つの脚本をコンクールに出そうと決めた時、ファンだった松田優作さんの名前がタイトルにあったこともあり、「百円の恋」で周南“絆”映画祭脚本賞の松田優作賞に応募しました。 Q: 受賞したときはどんな気持ちでしたか? その時のことは今でもよく覚えています。首の皮一枚繋がった。うれしさよりも、心の底からホッとしたという感覚でした。映画化が約束されたわけではありませんでしたが、もう1年は頑張っても大丈夫だと思えました。寿命が延びたという感じですね。 Q:ご家族の反応はいかがでしたか? 妻は僕と同じ、祈るような心境だったと思います。いつになく優しかったですね。最終審査に残り、映画祭に呼ばれ、その場で結果発表。受賞の電話をした時は悲鳴を上げて喜んでいました。5歳だった上の子も両親のワラにもすがる雰囲気を感じとっていたのかすごく喜んでくれました。 Q:「百円の恋」が中国でリメイクされ、興行収入が700億円を超えるほどヒットしていますね? 外国でのリメイクには驚きました。リメイクは映画が評価された証で、大変光栄なこと。昨年10月には中国の撮影現場に行き、監督・主演を務めるジャー・リンさんにお会いしてきました。完成した映画はオリジナル作品に対するリスペクトが溢れていて、本当に「百円の恋」が大好きなんだとうれしかったですね。 Q:NHK連続テレビ小説「ブギウギ」の脚本を担当するようになった経緯をお教えください。 NHKのプロデューサーに映画監督としてのデビュー作「14の夜」が目に留まってオファーをいただきました。朝ドラはすごく大変だと聞いていましたし、2022年の春には映画「雑魚どもよ、大志を抱け!」の撮影も決まっていたので迷いはありました。ですが、妻からは『やってみろ』と強烈な後押し。朝ドラをやれば優しくしてあげると言われていたのですが、慣れない連ドラでかつてない忙しさに。家事育児の両立が出来なくなり、夫婦仲は悪くなりました(笑)。 映画「百円の恋」でも多数の賞をいただきましたが、「ブギウギ」を経験したことで映画とはまた別の大きな経験が出来たと感じています。 Q:「こども昭和カラオケ選手権」で審査員を務めるとお聞きしました。 今の子どもたちはYouTubeなどで80年代の曲を結構知っているという話を聞きます。僕が小・中学生の頃に聞いていたのは松田聖子さんや中森明菜さんなどアイドルたちの昭和歌謡。17、18歳のアイドルの歌を、成熟した大人たちが本気で作る。当時の歌にはそのすごさがあったような気がするんです。 歌の持つ力は本当にすごい。歌っている方も、聞いている方も元気になる。子どもたちがその頃の曲をどんな思いで聞いて、どんな思いで歌ったのか聞いてみたいです。楽しみにしています。 Q:周南地域の皆さんへメッセージをお願いします。 周南市には周南“絆”映画祭で何度か行かせていただきましたが、10回以上もあのような映画祭を続ける地元の人のエネルギーには感服です。「こども昭和カラオケ選手権」のように子どもを主体にしたイベントも開催できる熱量ある街だと思います。 僕にとってすごく大切な映画祭であり、大切な街。新しい映画を作って、また周南市にうかがえるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
[プロフィール]
鳥取県倉吉市出身の脚本家、映画監督。2012年に開かれた第4回周南“絆”映画祭で「百円の恋」が脚本賞・第1回松田優作賞を受賞。同作品は2014年に映画化され、第39回日本アカデミー賞で優秀作品賞、最優秀脚本賞に輝いた。 2019年には自身の夫婦生活をモデルに監督・脚本を務めた「喜劇 愛妻物語」が第32回東京国際映画祭コンペティション部門で最優秀脚本賞を獲得。2023年にはNHK連続テレビ小説「ブギウギ」の脚本を担当し、“ブギの女王”と呼ばれた笠置シヅ子さんの波乱万丈な人生を描いた。