【大阪杯回顧】苦境の4歳世代が反撃の狼煙を上げる 着実に力をつけるベラジオオペラと上村洋行厩舎
タスティエーラがふたたび輝く舞台とは
2着ローシャムパークは最終追い切りで明らかにワンランク上の時計を出しており、それが結果に結びついた。関東気鋭の田中博康厩舎はレモンポップの開花のように、慎重にじっくり成長に合わせる馬づくりが特徴だ。それだけに負荷をかけた調教は実力が十分ついた証でもあった。今回はスタート直後、ポジションが後ろになったが、向正面で動く積極策でベラジオオペラとの競り合いに持ち込んだ。好判断だったのと同時に、少し荒っぽい競馬をしても最後まで走れた点にローシャムパークの進化を感じる。本来はもう少し前で競馬できるわけで、ゆったり運べる距離と舞台で見てみたい。 3着ルージュエヴァイユは4コーナー10番手から差してきた。流れを考えれば致命的な位置取りだったが、迷わずインを突いた判断が好走をもたらした。4着ステラヴェローチェが同じ位置から外を回って同馬に半馬身及ばなかったことを踏まえると、勝負圏内に入れたのは菅原明良騎手の判断が大きい。勝ち味に遅く歯がゆいタイプながら能力は重賞級。ただ、どんな相手でも2、3着なので、大阪杯の結果からGⅢあたりで人気になっても勝てるとは限らない。その辺のジャッジを的確にし馬券に役立てよう。 1番人気タスティエーラは11着。位置としては流れに乗っていただけに物足りない。サトノクラウン産駒らしく阪神でも時計が速い馬場だと苦しい。高速決着に弱い反面、時計がかかれば一変もある。皐月賞は重馬場2:00.6、ダービーはスローで2:25.2、菊花賞はゆったり流れた長距離で3:03.1。三冠はどれも高速決着になっていない。この世代のクラシック級が活躍していないのはこの点が関係しているのではないか。父が勝った宝塚記念は今年、京都で行われる。時期は変わらないので梅雨特有の重い馬場になれば、復活があるかもしれない。そして、そのときはソールオリエンス、ドゥレッツァもセットで好走しそうだ。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬中心の文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳