梅宮アンナさんが吐露したがんの痛み…我慢すると寿命が縮む【中川恵一 がんサバイバーの知恵】
【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】 乳がんで闘病中のタレント・梅宮アンナさん(52)が、手術後の痛みについて自らのSNSで語っています。「私は今の、状態はワキ、腕 ウルトラ痛い。。」「神経損傷だもの。。ひぃ~」といった具合です。かなりの痛みであることは間違いないでしょう。 子供の顔を見ながら泣きました…お笑い芸人の植山由美子さん乳がんを語る がん専門医である私も6年前の年末、早期の膀胱がんを手術で切除していますから、術後の痛みは経験していて、麻酔が切れると、激しい痛みに襲われたことを覚えています。鎮痛剤を処方してもらい、楽になりましたが、痛みを除く緩和ケアの大切さを改めて痛感しました。 一般の方は緩和ケアというと、“末期のつらさを抑える治療”というイメージをもたれるかもしれませんが、がんと診断されてから亡くなるまですべての段階で必要な治療です。物理的な痛みはもちろん、いろいろなときに生じる精神的な苦痛も含めて、その都度つらさを取り除く治療が欠かせません。告知直後の不安、仕事との両立や生活への不安もしかりで、こうした不安は診療連携拠点病院にある相談支援センターを利用するのがお勧めです。 梅宮さんが鎮痛剤を処方されているのか分かりませんが、術後の痛みがつらいときは主治医に積極的に鎮痛剤を処方してもらいましょう。医師への遠慮は禁物。どんどん主張して構いません。痛みを我慢することはないのです。 どんながんであれ、早期は症状が見られませんが、手術後の痛みをはじめとする後遺症が少なからずあります。進行して痛みが出てきたら、当然、そのためのケアが必要です。 ところが、日本では緩和ケアが十分に進んでいません。がんの痛みを取る医療用麻薬の使用量でみると、ドイツの10分の1以下で主要国では最下位レベルで、さらに減少傾向です。 たとえば、がんで亡くなる90日前の医療用麻薬の適正使用量は、モルヒネ換算で5400ミリグラム。日本はわずか311ミリグラムで、17分の1に過ぎません。国立がん研究センターの調査によると、亡くなる1カ月前に「痛みがなく過ごせた」は47.2%でしたから、過半数は苦しみながら人生の幕を下ろすのです。 抗がん剤単独で治療するグループと緩和ケアを併用したグループを比較すると、緩和ケアの併用グループは抗がん剤単独グループより生存期間が長い上、不安やうつ状態なども有意に少ないことが報告されています。痛みを我慢するのは無意味な上、生存期間を縮めてしまうのは、ダブルで損でしょう。 どんな痛みも、我慢することはないのです。 (中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)