『フェルマーの料理』揺れ動くヒーロー像を志尊淳が体現 海の秘密に迫るヒントはどこに?
白と黒の間に存在する、グレーの領域で揺れ動くヒーロー像がある。TBS金曜ドラマ『フェルマーの料理』の中心人物・朝倉海(志尊淳)は、まさにそのようなヒーローだ。海の魅力は、明確な善悪が定まらない、謎に満ちたキャラクターに由来している。海には“秘密”があり、そのミステリアスな一面が彼の飄々とした掴みどころのなさに繋がっているのだ。 【写真】志尊淳&上半身裸の高橋光臣&仲村トオルらの謎の会合 海はこれまでも、真意が読み取れない行動で岳(高橋文哉)を惑わせてきた。そして第5話では、ついにレストランKの背後に隠された新たな真実が明らかに。海が蘭奈(小芝風花)の母・桜(釈由美子)の店を買収した事実が判明し、シェフたちは混乱に陥る。しかし海は、結果的に悪者ではなかった。真の悪はヴェルス学園の理事長・西門(及川光博)であり、海は「たとえ憎まれても彼女を成長させる。だからその時まで、母親の店を奪った憎まれ役でいさせてください」と桜へ固い決意を示していたのだ。 本作において、海は表面上はその強いこだわりゆえに冷酷な料理人として描かれているが、その背後には「料理の歴史を変えたい」という深い情熱が隠されている。しかし、第6話の予告では蘭奈が「海、どうしたの? なんか変だよ」と心配する声が挿入されており、視聴者の間で海に対する心配の声が高まっている。特に、SNS上で飛び交っているのは「海が味覚障害ではないか」という憶測だ。 海の行動には、時折不可解な点が見受けられるが、これが味覚障害に起因するものと考えると納得がいく。特に第5話での彼の涙は、印象深いものだった。キッチンでラム肉を試食しながら涙を流す姿には、多くの視聴者が驚いたはずだ。しかし、彼が本当に味覚障害なのであれば、突然皿を突き飛ばす海の様子は、「味を感じ取れない苦悩」ゆえにやるせなさを感じていると捉えられるのではないか。 またスーシェフの布袋(細田善彦)が提案した味見の際、海がテイスティング後に無言で固まる様子からは、海が味を識別できずに答えられなかった可能性も考えられる。さらに、第4話では海がイチジクを試食した後、動きを止めて何かに深く思い悩む表情を見せていた。料理人にとって最も重要な“味覚”に問題があるとすれば、それは料理に人生を捧げている海にとって、非常に残酷なことだ。 もちろん、これらは現段階では全て憶測に過ぎないが、海が何らかの病気にかかっている可能性はゼロではないだろう。実はこの推測は、海が頻繁に訪れる夜の謎めいた会合とも関連している。 西門は、上半身裸の淡島(高橋光臣)と伝説のシェフ・渋谷(仲村トオル)に重要な書類を渡していた。このシーンでは、書類を受け取った淡島が「これは私が書いたものだ」と返し、西門が「朝倉海はもう、シェフではいられない」と答える。この謎の“書類”が海の診断書であるとしたら、どうだろうか。 さらに、淡島に「俺には時間がないのか?」と尋ねる海に対し、淡島が「来年の花見くらいまではあるだろう」と答えるやり取りも。そう考えると、“時間がない”海が真理の扉を開けるべく、岳に必要以上に厳しいスパルタな言葉をかける理由にも頷ける(単に海の性格が難ありなのも理由だろうが)。2024年の海が、なぜレストランKにいないのか。考察を交えて考えると、この先が少し怖くもある。 第6話では、コースのメインシェフを巡る競争が描かれる様子。作品全体を通して、点と点が徐々に繋がっていく様子がうかがえるに違いない。もちろん、料理のシーンも魅力的なのだが、そろそろ全体の折り返しということもあって、海の秘密に迫るヒントが現れる気配が漂っている。 もし、海の秘密に未来の岳が触れているのだとしたら? つい闇堕ちした岳の変化に目が奪われてしまいがちではあるが、“何が岳をそこまで追い込んだのか”を考えると、また違うものが見えてくるかもしれない。第6話以降の展開は『フェルマーの料理』の“料理以外”のパートにこそ、海という人間を紐解く重大なヒントが眠っているように思う。
すなくじら