猿の出現が急増、でも迷惑でないのはなぜ? ここは野猿公苑、観光客は喜び 長野県山ノ内町
長野県山ノ内町の地獄谷野猿公苑で今秋、猿が出現する日が例年に比べ急増し、温泉に入る猿を見に訪れる観光客を喜ばせている。昨年10月は、「不在」の日が計21日に及んだが、今年10月は計5日にとどまった。県北部では今秋、木の実の不足が指摘され、熊の里への出没が相次いでおり、専門家は、猿も食料を安定的に得るために、餌が出る野猿公苑に出現する日が増えている―とみている。 【写真】雪の中の温泉に漬かる猿
野猿公苑の一帯には200匹近い野生の猿の群れがおり、日中に大麦を中心に配合した餌を与えている。運営会社の萩原敏夫社長(59)によると、例年は秋になると、野猿公苑から1~2キロほど離れた奥山に実るヤマブドウや栗をめがけて、山の中に入ってしまい、姿を現さないことが多いという。
40年近く野猿公苑で仕事をしてきた萩原社長は「例年は1、2週間と続けて不在になることがほとんど。過去にも山の実が不足した年もあるが、これほど『出席率』が高いのは記憶にない」。昨年は計14日不在だった11月に入ってからも、10日時点まで不在の日はゼロの状態が続いている。「今秋は、猿にとって魅力的な山の恵みが、特に不作になっているのかもしれない」としている。
研究のために野猿公苑に通う信州大理学部の松本卓也助教(36)も「出現する頻度が例年よりも格段に高いのは、山の実りが少ないという餌の要因が大きい」とみる。
新型コロナの感染拡大が落ち着いて以降、外国人客を中心に連日にぎわっている野猿公苑。9日に新潟県三条市から訪れた会社員、本合祐基さん(33)は6年前の同じ時期に訪問した際は数匹しか見られず「念願かなった。ほっこりしますね」と、温泉に漬かる猿を笑顔で眺めた。
萩原社長は、猿の出現増加を「ありがたい」と歓迎しつつも「いつ何時、不在になるか自然なので計算できません。あまり期待しすぎないでください」と念を押した。