「2島か、沖縄か」日ソ共同宣言直前、領土返還で圧力かけた“ダレスの恫喝”
ソ連が一方的に漁業規制区域を設置 多数の日本船をだ捕
しかし、北方領土をめぐり、日ソ間の交渉は難航。「歯舞・色丹を日本に引き渡していい」というソ連側の打診に、「4島返還」を求めたい日本との間で、たびたび中断。さらにソ連は一方的に漁業規制区域を設け、日本のサケ・マス漁船を締め出します。北海道水産林務部水産局漁業管理課がまとめた北方領土周辺水域における被だ捕状況によると、この年だけで、89隻の船、677人がだ捕されました。やむなく日ソ漁業条約を結び、国交回復に向けて交渉を再開します。 また歯舞・色丹の2島で決着することについては米国のダレス国務長官からも横やりが入りました。2島返還で講和した場合は、沖縄を日本に返さないことを示唆した、いわゆる「ダレスの恫喝」です。東西冷戦を背景に、日ソ間が接近することに警戒を示したともいわれています。
人命を優先「領土は何年たってもなくなることはない」
結局、シベリア抑留者の帰国を最優先課題とした鳩山首相は、「領土は何年たってもなくなることはないが、人の命には限りがある」として、まずは国交正常化することを決断。領土問題に関する交渉は、後日継続して行うこととしました。この“玉虫色”の決着で、日本は1956年12月18日の国連総会で80番目の加盟国として全会一致で承認されました。 それから60年―。国交回復を優先し、棚上げされた「北方領土問題」は解決していません。日ソ共同宣言に書かれた平和条約の締結も、歯舞群島・色丹島の返還もないまま、今日に至っています。