マクラーレンF1、常勝軍団復活に向けて求められる“チーム内での刺激”。ノリス「些細なことが勝負を分けるところまで来た」
マクラーレンのランド・ノリスは今季のマイアミGPで優勝したものの、直近のレースでは勝利を逃してきたことから、その原因となった小さなミスを回避するため、チームとドライバーがお互いに刺激し合う必要があると学んだと語った。 【ギャラリー】新ルールで2026年のF1マシンはどうなる? 前戦カナダGPでノリスは、コースがドライアップしていくコンディションで首位に浮上したものの、セーフティカー出動時にピットストップタイミングが1周遅れたことで、レッドブルのマックス・フェルスタッペンにリードを奪われた。 またウエットからスリックへの交換タイミングとなったレース中盤にノリスは、インターミディエイトタイヤでのスティントを引っ張ったものの、ピットストップ直後にコース上でフェルスタッペンに交わされてしまった。 マクラーレンはまた、エミリア・ロマーニャGPやモナコGPでの小さなパフォーマンス改善やその他の重要な決断によって、ライバルにチャンスを明け渡すのではなく、もっと有利にレースを運べたかもしれない。 スペインGPを前にノリスは、ドライバーとチームの双方がカナダGPでの出来事を深く掘り下げ、レースに対するアプローチにおける重要な変更点について話し合ったと明かした。 その変更点の最たるモノが、不測の事態への対応強化だ。チームとドライバーがお互いに刺激し合い、ミスが許されないような状況を作り出すことが求められるとノリスは説明した。 「僕らは何度も見直した。チームも見直したし、僕もそうした」 ノリスはカナダGPを前にそう語った。 「無線とかそういうモノ全てを聞いた。僕らが『完全にやっちまった。何か間違ったことをしてしまった』という瞬間はなかった。でも(セーフティカー出動時にピットストップしなかったのは)やはり難しい決断だった」 「単純に、もっと準備しておくべきだった。『もしセーフティカーが出たら……』という選択肢を用意しておけば良かったんだ。同時に僕の方からすると、雨がどれくらい降るのか分からないからね。雨が降っていると聞かされていたから、自分の気持ちや判断の多くを、チームの指示から決めているんだ」 「だから、彼らの方からも僕の方からも、刺激し合ったり、より多くのフィードバックを与えたりすることも少しはあるだろう」 ノリスはそう語る一方、マクラーレンがこれまでとは劇的に異なることをする必要はないと考えている。むしろチーム間のパフォーマンス差が非常に接近している今、重要なのはディテールであり、チームが整える必要があるのはそこだとノリスは説明した。 「大きな変化は要らない」とノリスは言う。 「何かを劇的に変えなければならない訳ではない。ただもうひとつ疑問があるとか、もうひとつ小さな決断をしなければならないとか、そういうことだ」 「とても小さなことだけど、見てきたように、それがとても大きな結果をもたらすんだ。本当に、みんなに満足している。チームにも、彼らの仕事ぶりにも、全ての面で改善しようとしている姿勢にも満足している」 「また週末を過ごして、もっと良い決断ができるようになると確信している。それだけだ」 ノリスの考えはチームメイトのオスカー・ピアストリも同じ。マクラーレンは今、どんな小さなミスでも深手を負うポジションにあるとピアストリは言う。 「よりプレッシャーがかかり、スポットライトを浴び、ミスの代償も大きくなる」とピアストリは語った。 「見ての通り、レッドブルやフェラーリ、メルセデスといった、基本的に何十年もトップを走ってきたチームと戦うことになる。僕らとしては、ここ最近、優勝争いに戻ってきたようなモノだ。だからある意味では、僕らは他のチームよりも経験が浅いのかもしれない」 「僕らは上位に戻るために学んでいるのではなく、ミスができない状況にあると思う。どんな小さな隙も与えてはいけない。そこにつけ入ろうとする人たちがいるからね」 ノリスはここ数戦で勝利を逃していることにフラストレーションが溜まっていることを認めつつ、この1年でチームがどれだけ進歩してきたかを忘れてはいけないという。 「ポジティブな面を見る必要がある。僕らは連続して悪いシーズンを過ごしてきたばかりだからね」 「どれだけ悪かったか、どれだけ進歩してきたかを思い出す必要がある。すぐに忘れてしまうことだからね」 「どれだけひどかったか、逆に今の僕らの立ち位置を知ることが、みんなにとって良いモチベーションになる。チーム全員にとって励みになる」 「でも同時に、良い判断を下せてレースで勝てたかもしれない時は、1位を争っていようと10位を争っていようと、全ては相対的なモノだ。そして勝利はさらに大きな意味を持つ」 「10位争いをしていて、それが9位だったかもしれないとしたら『よし、1ポイントか2ポイントだ』ということになる。でも2位で『勝てたはず』と思えば、より傷つくことになる」
Jonathan Noble