被災した和子牛を買い取ります 全農いしかわ 酪農家に代わり育成、出荷
JA全農いしかわは、能登半島地震で被災した酪農家の下で生まれた和子牛を買い取る取り組みを始めた。体調を崩しやすく手間のかかる和子牛の世話を引き受けることで、断水や人手不足に悩まされる酪農家の負担を軽減する。 県内には31戸の酪農家がおり、多くが和子牛の生産にも取り組んでいる。ただ、地震による道路の寸断や断水で、なお水や飼料不足に苦しむ酪農家が少なくない。人手不足も重なり、特に手間のかかる和子牛の世話が負担となっていた。 そこで全農いしかわが2月から始めたのが、今回の取り組みだ。和子牛を買い取り、市場に出荷するまでの育成を引き受ける。子牛の価格は、北陸三県和牛子牛市場の平均価格を参考に決める。 第1弾として2日、金沢市近郊の河北潟干拓地の4戸から15頭を買い取り、JA全農長野の協力を得て、長野県木曽町の三岳牧場に移管した。 第2弾として9日には同干拓地の5戸と白山市の1戸から12頭を買い取り、白山市の牛舎に運んだ。牛舎はJA松任の協力を得て、離農などで空き施設となっていた1棟を借りた。当面は全農職員が育てる。 9日に1頭を託したサン・スマイリー農場(内灘町)は、和子牛を含め300頭を飼養する。断水中は水の確保で寝る間もなく、子牛の体調を気遣い精神を削る日々を送った。山本真由美代表は「個人の力では限界もあった。引き取ってもらえて助かる」と話す。 全農いしかわによると、白山市の牛舎と三岳牧場合わせて、60頭の受け入れが可能。県の畜産試験場でも受け入れ態勢を整える。同干拓地だけでなく、震災で甚大な被害を受けた能登半島北部からの引き取りも視野に入れる。畜産生産課の吉村彰悟係長は「農家が本来の酪農業に専念できるよう手助けしたい」と話す。
日本農業新聞