ヤンキースがイチローを放出できない理由
だが、イチローを放出するには、肝心の外野のレギュラー候補が心もとない。エルズベリーは、「レギュラーシーズンなら出場していた」と、軽症であることを強調していたが、17日の敵地でのパイレーツ戦の遠征メンバーからも外れることが決まった。 ヤンキース陣営は、昨年、7年1億5300万ドル(約156億円)という巨額を投じて獲得した新右翼手の故障歴については敏感だ。レッドソックス時代から、パンチ力もあるシュアな打撃と、類い稀な走塁能力でメジャーを代表する一番打者となったエルズベリーだが、故障とは無縁ではない。2010年は脇腹痛で18試合しか出場できなかったし、2012年は、右肩痛で74試合しか出場していない。昨年は134試合に出場しているが、プレーオフ進出をかけた大事な9月に、16試合欠場した。 この故障歴を懸念すれば、“無事これ名馬なり”を地でいくイチローを、そう簡単に手放せないというのが、ヤンキースの事情なのである。 エルズベリーの欠場で、ここぞとばかり活躍したイチローは、4試合ぶりのヒットを放った試合後、「(ヒットがなかったのは)3試合ですか? 自分では数えてないからね」と、サラリ。オープン戦では結果より自分の感覚を磨くことが大事だと語っているイチローは、着々と開幕への準備を進めているようだ。 キャンプイン早々には、同じく外野のライバルとなるソリアーノが、インフルエンザでダウン。日ごろからコンディション管理に万全の注意を払い、しっかりと準備を続け、試合に出続けることに、ひとつの哲学を持つイチローだからこそ、こういうチームの危機に存在感を示す。これで、トレードが完全封印されたと考えるのは、早合点かもしれないが、シーズンが始まれば、案外、背番号「31」が先発に名前を連ねるケースが増えるのかもしれない。