進むも引くも“地獄” それでも「なぜやめない…」バイデン大統領、選挙戦継続へ 急速に失う信頼【アメリカ大統領選挙】
民主党内に大混乱をもたらしたアメリカ大統領選の最初の討論会から1週間、衰えを露呈したバイデン大統領(81)に対する撤退圧力は強まるばかりだ。 【画像】討論会翌日にアトランタのワッフル店を訪れ、討論会について「よくやったと思う」と発言していたバイデン氏 バイデン氏は7月2日、バージニア州で開かれた集会で、討論会での自らのパフォーマンスの低さを認め、「ステージで居眠りしそうになった」と釈明し、討論会前の多忙な外遊スケジュールのせいにした。
“様々な憶測に終止符”選挙戦の継続表明
翌3日、ニューヨーク・タイムズはバイデン氏が側近に対し、「今後、数日間で国民を納得させることができなければ、出馬できないかもしれない」と語ったと報じ、ホワイトハウス報道官は、この報道を「完全に誤りだ」とすぐさま否定した。 それでも支持者や献金者、議員らが沈黙を破り、選挙戦からの撤退を公然と語り始めた事実は変わりなく、バイデン氏の信頼は急速に失いかけている。 バイデン氏は、3日にナンシー・ペロシ元下院議長や民主党上院トップ、チャック・シューマー氏など身内との電話を重ねたほか、ハリス副大統領と昼食をともにし、民主党の州知事らからもホワイトハウスで直接話を聞いた。だが、バイデン氏が党関係者と直接話をするのは討論会の数日後になったことで、怒りをかっているとの話もある。 こうした中、民主党全国委員会は3日、委員会の全てのスタッフがバイデン氏とハリス副大統領と電話会談し、様々な憶測に終止符を打ったと発表し、選挙戦の継続を表明した。バイデン=ハリスの選挙キャンペーンも同時に選挙戦の継続を表明し、結束を呼びかけた。 バイデン氏は、5日にはテレビ討論会後初めてとなるABCの単独インタビューに応じ、ウィスコンシン州で選挙集会を開く予定だ。さらにその後は激戦州のペンシルベニアを訪問し、選挙集会を開く。支持者の声を聞きメディアに応じることで、自らを省み、選挙戦を継続させる意思を改めて表明するとみられるが、バイデン氏を取り巻く環境は依然、厳しいことに変わりはない。
専門家「バイデンの撤退はトランプの勝利を高める」
テレビ討論会のパフォーマンス後、アメリカの主要メディアでも、連日バイデン氏の撤退議論が絶えることはなく、その勢いは増すばかりだ。 一方、こうした動きに疑問を投げかけるのが、大統領選を長年分析しているアメリカン大学のアラン・リクトマン教授だ。リクトマン教授は、過去40年で10度の大統領選挙の予想を行い、そのほとんどを的中させている。リクトマン教授は、バイデン氏の撤退論を一蹴する。 「バイデンが選挙戦からの撤退を求める識者やジャーナリストの声に耳を傾けるのは、とんでもない間違いだ。これらの批評家たちは、バイデンの無能さと民主党の混乱という物語を盛り上げることで、ドナルド・トランプの術中にはまっている。 一般にメディアは、再選に向けて嘘をつき、あからさまにアメリカの民主主義の存続を脅かそうとしているトランプよりも、バイデンのたどたどしいパフォーマンスに焦点を当てることで、トランプの立候補を助けることに加担している。 バイデンの撤退は、トランプ勝利の可能性を高めるだろう。バイデン氏を非難する人々は、大統領選の結果を予測した実績がない。それでも彼らは、民主党が今年勝利するために何をすべきかを知っていると主張しているのだ」 「今日の状況は1968年に似ている。リンドン・ジョンソン元大統領(民主党)は、党内の批評家やメディアによって選挙戦から追い出され、ポスト争いと党内抗争を生み出した。民主党は、ベトナム戦争を長引かせ、民主主義を破壊しかけたリチャード・ニクソン(共和党)に大統領の座を奪われた」 リクトマン氏は、大統領選の勝敗を左右する13の分析項目を掲げるが、このうちバイデン氏が失っているのは、下院の主導権と現職のカリスマ性だけだと主張する。 さらに、1回の討論会に基づいてすぐに断定することは早計だと指摘した上で「バイデンは最近、2度の精力的な海外歴訪を成功させ、国内では1960年代以降のどの大統領よりも多くの業績を残し、プーチンのウクライナ侵攻を阻止する連合をまとめた」と擁護する。