【オーストラリア】中国鉄鋼輸出が急増、豪の鉄鋼事業に打撃
中国からの鉄鋼輸出の増加が、オーストラリアの中小規模の鉄鋼会社に大きな打撃を与えている――。鉄鋼最大手ブルースコープのバッセラ最高経営責任者(CEO)が年次総会で訴えた。ブルースコープのような大企業は損失を吸収できるとみられるものの、同氏は「小規模鉄鋼事業はわれわれの顧客であり、その事業が危機に陥れば影響が波及する」として警戒感を示した。公共放送ABCが伝えた。 現在、中国国内の住宅市場の低迷を背景に、中国産の安価な鉄鋼が海外に流出している。バッセラ氏は、「中国からの輸出量は1カ月当たり約1,000万トンに上る」と指摘。 オーストラリア鉄鋼協会(ASI)の調査では、鉄鋼製造業者の86%が、安価な輸入鋼材の流入により利益率が下がったと回答している。80%が損益分岐点を下回った状態で操業しているという。 ブルースコープはまた、人気製品「カラーボンド」を米国市場に投入する計画で、トランプ次期米大統領がオーストラリアの鉄鋼製品に関税を課すか注視している。 2018年のトランプ政権1期目には、同社の米子会社向けの鉄鋼年間30万トンについては関税を免除されていた。 ■ワイヤラ製鉄所、資金調達 サンジープ・グプタ会長率いる英エネルギー大手GFGアライアンスは、南オーストラリア州に保有する財政難のワイヤラ製鉄所事業向けに、1億5,000万豪ドル(約150億円)の緊急融資を確保した。調達先は明かされていない。工場のメンテナンス作業とサプライヤーへの支払いに充てられる。 ブルースコープは、ワイヤラ製鉄所について、協力する用意があるとしている。買収の可能性には触れなかったが、製鉄所の操業を継続する必要があるとした。