「ダンプ通ると危ない」「開発必要か」リニア工事、生活道路での残土運搬に村民困惑 突然の計画変更、憤りの声も
長野県阿智村の村長、開発に温泉地を通る国道使う方針
長野県下伊那郡阿智村がリニア中央新幹線トンネル工事で発生する残土を活用して開発を検討する上中関地区の「七久里候補地」を巡り、村が、昼神温泉郷を通り、生活道路でもある国道256号を使って南木曽町や清内路地区から残土を搬入する方針を明らかにしたことに、沿線住民らから困惑する声が出ている。開発の詳しい計画は示されておらず、多くのダンプカーの通行も予想されることから、住民との丁寧な協議が不可欠になる。 【地図】阿智村が残土を運搬する可能性を示した開発候補地
産業団地造成や道の駅建設での利用を想定
七久里候補地の開発事業では、産業団地造成や道の駅建設を想定するものの、村は具体的な計画を示していない。熊谷秀樹村長は14日のリニア対策委員会で、事業について「村の将来のために何としても実現したい」と述べた。
想定していた工区からの残土は受け入れ先が固まり「土が足りない」状況に
村は当初、飯田市や大鹿村の工区から出る残土を使って埋め立てる方針で、清内路地区と南木曽町からの残土は、国道256号を通ることになるため、受け入れないとしていた。ところが、飯田市や大鹿村の工区から出る残土の多くは受け入れ先が固まり、県内工区全域を対象にしないと土が足りない状況になっているという。
住民から「行政の説明責任を果たしていない」
村の方針変更に対し、「今までの方針を変えてまで開発が必要なのか。まず開発の詳細が示されないと住民理解を得られるはずがない」と清内路地区自治会長の桜井弘志さん(75)は語気を強める。昼神温泉郷で旅館を経営する小島嘉治さんも「地域振興につながるから埋め立てる―というだけでは行政の説明責任を果たしていない」と話す。 阿智昼神観光局の白沢裕次社長は「観光地に多くのダンプカーが通るリスクをどう軽減するのか議論する必要がある」と指摘する。
村は来年度中に住民と協議の方針
対策委ではJR東海が、工事迅速化のため、国道256号を使って残土を飯田下伊那方面へ運搬することを検討しているとした。同社の担当者は取材に「村と相談しながら、沿線の関係団体と協議を進めていく」と話した。 村は2024年度中に、七久里候補地の開発に関する委員会を設置し、住民と協議を進めるとしている。