震災での避難が縁に 53歳のベテラン競輪選手、25歳ルーキーとの初対決に喜び「同じプロの世界で一緒に走ることになるとは」
取手競輪場のモーニング競輪「オッズパーク杯(F2)」は14日、最終日を迎える。6RのA級チャレンジ選抜に出走予定の増成富夫(53歳・岡山=66期)と岡部伶音(25歳・福島=123期)に話を聞いた。 前検日に増成富夫と話をしていると、今節もっとも楽しみにしていることがあるという。それは一体何なのか聞いてみると「伶音(岡部)との対戦」と話す。岡部は福島で増成は岡山。全然地区が違うのに「伶音」と呼ぶ辺りに何かの繋がりがあると感じた。 さらに深く聞いてみると「(東日本)大震災があったでしょ? あの時に一家揃ってこっち来たんだよね。その時、伶音は中学生くらいだったかな。あの時に比べると、随分でかくなったよな」と検車場奥に居た岡部を見ながら話してくれた。 「そういう意味では俺と同じ岡山人なんじゃないかな。思春期をこっち(岡山)で過ごしていたんだから、友達もこっちの方に多く居ると思うよ。とにかく家族ぐるみの付き合いだったなあ。それと伶音が野球をやっていたから、それを見に行ったりもしたなぁ。ある時、自転車をやりたいって言っていたので俺のフレームを貸したりもした。それで学校(養成所)に入って、同じプロの世界で一緒に走ることになるとは。本当に感慨深いものがあるよ」としみじみと話していた。 今回の準決勝戦で同じレースになってはいたが、対戦相手の中に本命の治田知也が居たために、対決というような流れにはならなかった。しかし、最終日は何とほぼ増成と岡部の2分戦の番組となった。 「いやー、番組も(偶然とは言え)粋なことしてくれるよね」と本当に楽しみにしていた岡部との力勝負が実現して嬉しい様子だった。 一方、岡部伶音は「僕が最初に乗った自転車は増成さんのフレームでした。それは今でも忘れません。自力で実績を積まれた増成さんと対戦するのは楽しみでもあります。増成さんの胸を借りるつもりで力勝負します。勝負する以上はしっかり勝つ」とキッパリ。 不思議な縁で結ばれた2人の対戦。結果はどうであれ、競輪選手としてお互いの力をぶつけ合うナイスレースをしっかり見届けたいと思う。(アオケイ・真島記者)