「けんじ君がおいしくなるように」女子生徒3人が愛情込める「博多和牛」…福岡県の糸島農業高
福岡県立糸島農業高(糸島市)の生徒たちが県産ブランド牛「博多和牛」として出荷するための肥育に取り組んでいる。ロシアによるウクライナ侵略や円安を受けた飼料価格高騰、認知度不足など課題は多いが、肉質などを競う全国大会「和牛甲子園」で入賞を目指している。商標登録から来年で20年の節目となる博多和牛。生徒たちは「おいしさを多くの人に知ってもらいたい」と意気込んでいる。(今泉遼) 【写真】博多和牛の魅力について説明する生産者の「堀ちゃん牧場」堀田社長
同高3年の女子生徒3人がブラッシングすると、去勢された雄牛の「けんじ」は気持ちよさそうにしていた。24日、JAグループ福岡が同高の牛舎で報道陣向けに開いた見学会。生徒たちは昨夏から、朝夕にエサを与えたり、牛舎の掃除をしたりして、けんじを大事に育ててきた。
今年1月の和牛甲子園に県内の高校で初めて出場し、肥育の取り組み内容を発表して奨励賞を受賞。来年の和牛甲子園には、けんじを博多和牛として出品し、入賞を狙う。
津田舞香さん(18)は牛舎見学の後に開かれた記者会見で、「けんじ君がおいしくなるように世話をしている。自分たちで県の博多和牛を育てることができて光栄。良い機会だと思っている」と語った。
JAグループ福岡によると、博多和牛は、登録された生産者が県内でおおむね20か月以上肥育した肉質が3等級以上の牛肉。2005年に商標登録された。生産者は5月時点で県内に38戸あり、年間約3000頭出荷している。県内産の稲わらが主食で、「柔らかくてジューシーなおいしさ」が特徴だ。
「佐賀牛」や「鹿児島黒牛」など名だたるブランド牛が九州にひしめく中、課題は認知度向上だ。飼料価格も高止まっていたり、物価高で消費者が安価な豚肉や鶏肉を購入する傾向が強くなったりと、牛農家自体への逆風も続く。
JA福岡中央会の乗富幸雄会長は「日本の将来の畜産を担ってくれたらうれしい」と期待した。
糸島農業高に先立ち、博多和牛を生産する福岡市西区の「堀ちゃん牧場」でも見学会が行われた。牛の繁殖と肥育に加え、焼き肉店を営んでいる。
堀田和秀社長(69)は「エサが高くて、少しでも飼料を自給しようと牧草を作ったり、稲わらの収集に努めたりしている。精いっぱい愛情込めて育てた博多和牛を多くの県民に食べてもらいたい」と話した。