金田喜稔がタイ戦を斬る!「無得点だった前半には物足りなさ。堂安と中村は格の違いを見せつけた」
A代表経験の浅い選手が中心のメンバーでは…
[国際親善試合]日本 5-0 タイ/1月1日/国立競技場 1月1日、日本代表は国立競技場でタイ代表と対戦し、5-0で完勝した。 【動画】好機を逃さずズドン!2024年森保J初ゴールは田中碧の右足から 前半は得点が奪えなかったけれど、終わってみれば5ゴールの圧勝。元旦の国立に集まってくれた6万人以上のサポーターに喜んでもらえたんじゃないかな。日本サッカーとしては良いスタートが切れたと思う。 ただ、初選出の伊藤をはじめ、佐野、藤井、細谷、奥抜などA代表経験の浅い選手たちが先発した前半は、連係面に物足りなさもあった。 もちろん、アジアカップに向けたメンバー選考(同日の試合後、18時30分よりメンバー発表が行なわれた)もあったし、ピッチに立った選手は相手がどこであろうと、インパクトを残さなければいけないという覚悟を持って試合に臨んでいたはずだ。 しかし守備陣は、立ち上がりにスルーパスで森下の背後を取られそうになった影響もあったのか、ラインを高く保てていなかった。 タイの守備陣の集中力が高かったのもあるけれど、ボールを奪われた後に奪い返して二次攻撃に繋げるシーンもあまり見られなかった。
先発した伊東の出来は次元が違った
個人に目を向けると、先発した伊東の出来は次元が違った。ドリブル、相手DFの背後を取る動き、逆サイドにボールがある時のポジショニングなど、あらゆるプレーが安定していた。他の選手たちがもっと彼の良さを引き出せれば、ビッグチャンスに繋がっているシーンはたくさんあったと思う。 後半の頭から投入された堂安と中村は、個人の能力の高さだけでなく、チームのリズムを変えるという部分でも格の違いを感じさせた。 堂安はキープ力や左足のキック精度、視野の広さなど、中村は得点力の高さを見せつけた。ふたりが入って選手間のコンビネーションも高まり、チームの雰囲気ががらっと変わった印象を受けた。 ゴールを守った鈴木彩艶は、伸びしろや年齢を踏まえると、もっと成長してほしい選手のひとり。今回の試合ではスローイングから攻撃に繋げるシーンもあったし、足もとは自信を持ってやっているだろうから、代表の守護神の座を勝ち取ってほしいという期待感がある。 一方でアピールが足りなかったのは細谷。2026年の北中米ワールドカップを目ざすうえでは、上田や浅野、前田などタイプが異なる選手とのポジション争いに割って入っていかなければならない。スピードなどポテンシャルはあるから、もう少し点を取ることに貪欲さがあってもいいと思う。 1月12日からはアジアカップが始まる。そう簡単な話ではないけれど、当然狙うのは優勝だ。それにベスト4以上に勝ち進めば、約1か月間も代表活動ができる。チーム戦術や連係をさらに深められるはずだし、その時間を有効に使いながら優勝を目ざしてほしい。 【著者プロフィール】 金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、65歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。