泉里香、大胆奔放な和泉式部で『光る君へ』に登場 まひろが“紫式部”となる第一歩目も
心が痛むまひろ(吉高由里子)と娘・賢子(福元愛悠)のすれ違い
なお、第30回では、まひろが声を荒らげる珍しい場面もあった。まひろは娘の賢子(福元愛悠)に、学問を身につけ、自分の生き方を自分で選び取れる人になってほしいと願っているが、賢子は、勉学よりも為時(岸谷五朗)や母と遊ぶことを望んでいる。 劇中、まひろを演じている吉高が賢子に向けるまなざしには、自分の思いが娘に伝わらないことへのもどかしさがある。一方、賢子役の福元が見せる表情は素直で、まひろの厳しさには苦手意識があることが分かるし、「おはじき、やろ」とせがむ姿はまさに遊びたいざかりの子どもだ。母親の気を引きたい賢子の気持ちが十二分に伝わってくる。だからこそ、「あとでやるから。今はちょっと忙しいの。許してね」と自作の物語の執筆に集中するまひろの返答が寂しい。けれど、本作を鑑賞している視聴者であれば、学問に魅了され、その世界でイキイキと輝くまひろが執筆に夢中になる気持ちも理解できるはずだ。双方の気持ちを汲むことができる分、まひろと賢子のすれ違いに心が痛む。 賢子はまひろが居室を出た隙に、原稿に火をつけて燃やしてしまった。まひろが激しく叱る様子に、たとえ娘であっても、自分が大切にしているものを燃やされてしまってはたまらないという率直な感情が表れている。執筆に夢中になるあまり、娘の気持ちを慮れなかったという面もあるが、母親も一人の人間だ。大切にしているものを壊されれば、怒りもこみ上げる。賢子を強く叱りつけた後、書きつづった物語が全て失われたことに打ちひしがれながらも、心を落ち着けようとする様にはなんとも現実味があった。 物語の終わり、いざ書こうとしても心が乱れて筆が進まないまひろの前に道長(柄本佑)が現れる。道長は晴明の言葉に従い、まひろに会いに来たのだろう。まひろは道長にとって、道長を“照らす光”なのだ。またしても思いがけない再会を果たした二人。物語を書き始めたまひろが紫式部となる日は近そうだ。
片山香帆