【北九州記念回顧】他馬を圧倒した天性のダッシュ力 ピューロマジックのスピードが秋に向けてのポイントに
付き合いやすいヨシノイースター
血統としては一緒にレースに挑んだメディーヴァルの全きょうだい。兄はダート短距離と直線競馬に強いというアジアエクスプレスの典型。とはいえ、アジアエクスプレスは父ヘニーヒューズながら、3連勝で朝日杯FSを勝った芝GⅠ馬。ヘニーヒューズ輸入のきっかけをつくった。速い上がりを問われる芝特有の緩急では苦戦するが、一定のスピードで走れる短距離やダートは合う。産駒は総じてダートに強いが、メディーヴァル、ピューロマジックの母メジェルダはディープインパクト産駒で、母の父がもつ軽さが芝での活躍源にもなっている。アジアエクスプレスの持続力と母系の軽さを味方につけるには、ピューロマジックのような競馬がベスト。今後も相手のスピードに合わせるのではなく、相手に付き合わせないスピードで圧倒してほしい。 2着ヨシノイースターは開幕週特有の超高速馬場にならなかったことが好走要因。自身の記録は1:08.0で自分の力はきっちり出した。オープン昇級直後は後ろからの競馬で結果を残せなかったが、好位から攻められるようになり、安定感が増した。小回りの短距離では、好位にいる優位性は大きく、この形でそこそこ時計を要するなら、そう崩れないだろう。馬券的には単勝でなければ付き合いやすい。前に行ける分、末脚が鈍るので、相手には今回のように前にいる馬を選びたいところだ。 3着モズメイメイは16番人気と驚かせた。重賞2勝馬だが、いずれも3歳時の逃げ切り。ロケットスタートでライバルを圧倒していた頃はよかったが、その後は苦労していた。昨年の北九州記念10着以降は二桁着順続きで、早熟という評価も妥当。それが一転して、差して3着。中間、坂路で自己ベストを記録していたが、いったいなにがあったのか。直線ではサーマルウインドとのタイトな進路争いを力強く制し抜けてきた。イメージを一新した今回は次に果たしてつながるのか。注目だ。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳