「ケイスケヨシダ」絶望の先に見いだす美学 裏地のエレガンス
メイン素材はあえて、キュプラ
生地使いと、それを余すことなく見せる服の構造も印象的だった。裏地に用いることが一般的なキュプラをメインに用いており、ジャケットやアウターの表地と裏地の間に穴を開け、モデルが頭を通すと、キュプラの裏地がトップスになる仕組みを作った。吉田デザイナーは「一見チープに見える生地にもエレガンスを感じたから。見えないものがあらわになる様子や、チープで脆弱なものの美しさを表現したかった」と解説する。
今回のコレクションに暗さを感じたのは、BGMも一因だ 。飛行機が離陸する前のような轟音や、雷鳴、獣の鳴き声などが混ざった不穏な音であり、吉田デザイナーは、同級生で現在は音楽レーベルCMYKに所属するNomizoに「会場の全員が僕と同じ嫌な気持ちになる音楽を」と依頼したと経緯を話す。しかし、ただ絶望に叩き落としたかったわけではない。暗い演出は、吉田デザイナーが過去の“嫌な気持ち”に真正面から向き合ってきた強さの証明で、着る人をエンパワメントする吉田なりのエールでもある。
「ケイスケヨシダ」は今年5月、「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」の三原康裕デザイナーが新たに立ち上げた会社の傘下に入った。資金とモノづくりのバックアップを得て、今後はパリを目指すと意気込む。世界を視野に、自身のクリエイションで若者たちを励まそうとしているのかもしれない。