塩野瑛久「一途な人柄に惚れました」 大河ドラマ『光る君へ』一条天皇を語る
大河ドラマ『光る君へ』にて、まひろ (吉高由里子/紫式部) や藤原道長 (柄本佑) の人生に、そして歴史の大きなうねりの中で、重要なポジションを占めることになる役、一条天皇。演じる塩野瑛久さんに、オーディションで決まった時の思い、そして現在演じるにあたっての心境を伺いました。 『光る君へ』一条天皇役・塩野瑛久 塩野瑛久さんが演じるのは、第66代・一条天皇。定子 (高畑充希) と彰子 (見上愛) という2人の妃を持ち、道長の娘である彰子のもとには、まひろが宮中女房として出仕。物語のカギとなる重要な役柄だ。 「オーディションで決まった初めての大河ドラマ。制作統括の内田ゆきさんとは、以前『佐知とマユ』 (2015年) というドラマでご一緒したことがありますが、オーディションではその時よりも成長した姿を見てもらえたのかなと。合格後、監督や脚本家の大石静さんに言われたのは、変に気張らず、そのままの自分を素直に出してほしいということ。個人的には顔立ちや雰囲気が、大石さんの描く平安時代の世界観にはまったのかもと思います」 配役が発表されると、SNSは“ピッタリ! ”などと盛り上がり、Xでは“一条天皇”がトレンド入りするほど。史実上、一条天皇とはどんな人物だったのか。演じるにあたり塩野さんが調べた中でも心を掴まれたのは、そのひたむきさだったという。 「誠実で聡明、そして龍笛 (りゅうてき) の名手。あとは猫好きだということも、よく書いてありますよね。でも、一条天皇といえば、やっぱり定子と彰子との関係。一人の女性を愛し続けることがなかなか難しい時代に、一条天皇は一途な思いを遂げた。その人柄に、惚れました」 そんな一条天皇の人生が、ドラマの中で立体的に描かれる。 「一条天皇と定子が仲睦まじく接しているのは、わりと最初のほうだけ。すぐに怒涛の展開となります。大石さんが書く一条天皇は、僕が調べた人物像より、ある意味人間らしい。暴走したりもしますから。それに脚本を読んで僕が感じたのは、とても情に厚いということ。ゆえに民を豊かにするとか、政治を良くするとか、相反する課題の間で苦悶する。好きな人への思いと政治の板挟みなど、ずっと苦しんでいる感じです (笑)」 一条天皇は龍笛の名手でもあることから、塩野さんもクランクイン前から練習を重ねたそう。 「これはもう、本当に難しくて最初は大変でした。でも、一生懸命練習して、先生たちも『ここまでやってくれる人はなかなかいない』と言ってくださって。また、先生たちが褒めるのがうまくて、そのおかげで成長できたと思うんですけど。ドラマでは、僕が実際に吹いている音を、そのまま使っていただけることになりました」 大河ドラマでは、龍笛しかり、所作や特有の衣装など、現代劇にはない、演じること以外の要素もプラスされる。 「時代劇は以前も出演したことがあるので、所作に関してはそこまで難しくないという印象です。それに僕は帝役。自分以上に偉い立場の人がいないので、悠々と座っていればいいという。ただ、その姿勢が実はキツいんです。今の胡坐 (あぐら) とは座り方が違って、しばらく座っていると脚が大変。衣装は夏と冬の2パターンで夏のほうが軽いことは軽い。白と紺、みなさんはどちらがお好みかな? (笑)」 帝ファッションにも要注目。今作には錚々たる俳優陣が出演しているが、なかでも共演シーンが多いのは、道長役の柄本佑さん。 「世の中を動かす二人なので、そこでの問答みたいなものがけっこうあります。ただ、それも御簾越し。高貴な人物は御簾の内側にいなければいけないのですが、御簾を隔てると心理的な距離を感じてしまって。この間も、撮影の合間に御簾の向こうで佑さんとロバート秋山さん (藤原実資役) が楽しそうに話をされていて、僕もその話題に入れそうだなと思っても、御簾の外からはこちらが見えにくいようで全く目が合わない。御簾という存在によって、天皇の孤独を感じることが多くなりました」 だからこそ御簾を越えてくる相手には、より親近感が湧くそう。 「政 (まつりごと) が取り払われるというか、自分の懐に入ってきてくれるような感じがして。とくに母上役の吉田羊さんとのシーンは、距離がぐっと縮まっていると思いますし、自分でも思ってもみなかった感情が湧いてきたりします」 『光る君へ』は、これまであまり大河ドラマになじみのなかった層も取り込んでいるが、塩野さん自身はこの作品の魅力をどんなところに感じているのだろう。 「まず平安時代がドラマになることが珍しいと思うんです。映像を通して、それがどんな時代だったのかを知れるところが魅力のひとつ。合戦がない時代ということもあり、そのぶん人間ドラマがより深く描かれているのも見どころです。あと、まひろ (紫式部) が『源氏物語』を、ききょう (清少納言) が『枕草子』を執筆するシーンもあるので、あの歌の背景にはこんなことがあったのかと、原作の解釈の幅が広がる楽しさもあると思います」 一条天皇としては、今後どんな見どころが待っているのだろう。 「基本的には定子と彰子との関係や、道長との政治のやり取りがメインになりますが、おそらくみなさんが想像するような歴史上の一条天皇とは、また違ったキャラクター性で描かれていると思います。最初は出演シーンが少ないものの、中盤以降は物語を引っ張るうえで重要な人物になるので、“こんなものか”と思わずに、気長に付き合ってもらえたら嬉しいですね」 写真提供・NHK 苦悩する麗しき帝、一条天皇に注目。 塩野さんが演じる一条天皇は、4月14日放送の第15回から登場。最初に入内した定子を愛するが、のちに彰子も入内し、世継ぎをめぐる政争に巻き込まれる。 大河ドラマ『光る君へ』 舞台は平安時代。主人公・まひろ (吉高由里子) は、紫式部として『源氏物語』を書き上げた人物。時代の荒波に翻弄されながらも、変わりゆく世を、変わらぬ愛を胸に懸命に生きる。毎週日曜20時~NHK総合ほかで放送中。 しおの・あきひさ 1995年1月3日生まれ、東京都出身。2012年に俳優デビュー。’19年、ドラマ『Re:フォロワー』主演。今秋放送予定のWOWOW『連続ドラマW ゴールデンカムイ ‐北海道刺青囚人争奪編‐』に出演決定。 コート¥99,000 ボウブラウス¥38,500 スラックス¥49,500 (以上LANVAN COLLECTION/LANVAN COLLECTION 表参道店 TEL:03-3486-5858) その他はスタイリスト私物 ※『anan』2024年5月1日号より。写真・樽木優美子 (TRON) スタイリスト・山本隆司 (Style3) ヘア&メイク・下川真矢 取材、文・保手濱奈美 撮影協力・BACKGROUNDS FACTORY (by anan編集部)