【10月のBS松竹東急】映画好きなら見逃せない! 今見てほしいこの3本!! ―― 推理小説の巨匠、松本清張、アガサ・クリスティ、横溝正史の作品を堪能する
今月は、有名推理作家たちのミステリ映画が充実。松本清張原作の作品では、三村晴彦監督のデビュー作「天城越え」(83)に注目したい。昭和15年の伊豆。家出した少年が天城峠を越えたところで美しい娼婦と出会い、彼はその後心細くなって家に戻る。やがてその日、天城峠で殺人事件が起きたことが分かり、容疑者となった少年は、娼婦と被害者が一緒にいたと証言する。これによって娼婦は取り調べを受け、彼女は追いつめられていく。少年に優しく、そして哀しい印象を残す娼婦を演じた田中裕子の存在感が絶品。特に少年と別れるときの哀歓を湛えた笑顔が素晴らしく、彼女はこの演技でキネマ旬報・主演女優賞など、多くの映画賞に輝いた。少年の成長した姿を演じる平幹二朗、娼婦を取り調べる刑事役の渡瀬恒彦の演技も見事。ミステリ映画としても、少年時代の記憶を切り取った青春映画としても、見応えのある一本になっている。他にも「砂の器」(74)や「わるいやつら」(80)といった大作や、子どもの心理を描いたサスペンス「影の車」(70)や「鬼畜」(78)など、野村芳太郎監督による松本清張作品を放送する。
イギリスで〝ミステリの女王〞と呼ばれたアガサ・クリスティ。その彼女が創造した世界的な名探偵がエルキュール・ポワロである。最近のケネス・ブラナーをはじめ、さまざまな俳優がポワロを演じてきたが、今回はピーター・ユスティノフがポワロを演じた「ナイル殺人事件」(78)が登場する。これはナイル川を遊覧する豪華客船の中で起こる連続殺人事件の謎に、ポワロが挑んでいくというもの。ミア・ファロー、ジェーン・バーキン、ベティ・デイヴィスなど豪華15大スターが競演し、70年代の〝大作映画請負人〞ジョン・ギラーミン監督が、目にも鮮やかな娯楽作に仕上げている。ユスティノフは大柄なところは原作と違うが、ユーモアを交えた人懐っこいポワロを好演。他にも彼がポワロに扮した「地中海殺人事件」(82)、ポワロと並ぶクリスティ作品の名探偵ミス・マープルが活躍する「クリスタル殺人事件」(80)を放送。また変わり種では、ポワロが登場する『ホロー荘の殺人』を野村芳太郎監督が翻案、映画化した「危険な女たち」(85)もお目見え。ここではポワロに代わる名探偵の小説家を石坂浩二が演じている。